« 極上のオーケストラ鑑賞ガイド | トップページ | 学校では教えてくれなかった算数 »

2008年9月22日 (月)

文学的なジャーナル――Journal Imagined

1669b






岡崎祥久著

四六判上製/216頁/定価1890円/2008年9月

 本書は、これまで「私」が20年以上にわたって段ボール箱に溜めてきたメモ(買い物リストや当座の予定などを書いた覚え書き)を元に、日記=ジャーナルを再構成するという形式の小説です。日付けのバラバラな日記は、しだいに当たり前の日常からはズレていき、「事実」の枷から放たれた豊かでユニークな世界が立ち上がっていきます。
 著者は、第139回芥川賞候補(『ctの深い川の町』)で話題となった岡崎祥久。群像新人賞・野間文芸新人賞受賞の実力派作家です。現代において小説を書くことへの高い意識に貫かれた本書、いまどきの小説に飽き足らない文学ファン必読の1冊です。

【本書より】
・「段ボール箱の中に蓄積された過去は、自然の地層のようには累重していない。新旧がないまぜになっている。そしてその分だけ、私の頭の中の小さな世界と相似している。」
・「二〇〇六年十月十四日 土曜日/海子はテーブルの下に地獄の犬を飼っている。/食事の食べこぼしで育てている。/今、梨を一切れ落としてやった。」
・「一九九五年四月七日 金曜日/新宿で、本屋に向かって昇ってゆくエレベータに乗っていたら、若い男が一人倒れた。『回ってきちゃった』と言いながら、ぐらりと倒れた。こういうのは初めて見た。」
・「二〇〇七年十月八日 月曜日/日本というのは、貧乏な作家にとっては、暮らしにくい国なのかもしれない──そう思うことがしばしばある。けれども西瓜子(ニカコ)はこう言うのだ──貧乏ならどこへ行ったって暮らしにくいよと。」
・「二〇〇一年六月二十日 水曜日/昔のメモを読み返しながら私は、いったい何をしているのだろうか。今よりさらに十年後、とまでは言わずとも、五年後か六年後に、この同じメモを〔私〕が読み返せば、いくらか異なる過去が作り出せるであろう。読み返すたびごとに、過去は生成されるのだ。」

« 極上のオーケストラ鑑賞ガイド | トップページ | 学校では教えてくれなかった算数 »

書籍・雑誌」カテゴリの記事