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2009年4月21日 (火)

結局、自分のことしか考えられない人たち――自己愛人間とどうつきあえばいいのか 

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サンディ・ホチキス著       
江口泰子訳

46判/並製/256頁/定価1575円/2009年4月


●理不尽な言動のウラにひそむ複雑な心理を解きあかす

 自己愛性パーソナリティ障害の人々を扱った『平気でうそをつく人たち』(M・スコット・ペック)が1996年にベストセラーとなり、2006年には『良心をもたない人たち──25人に1人という恐怖』(マーサ・スタウト、いずれも小社刊)が評判を呼んだ。近年話題の「モラハラ」と呼ばれる精神的虐待をおこなう人々もそうだが、他者への共感を欠き、都合が悪いとうそをつき、自分の利益のために手段を選ばず、つねに悪いのは他者だと思い込ませる「自己愛人間」たちは、どこにでも存在しており、彼らに利用されて苦しんでいる人が少なくないことが、広く知られるようになった。
 本書はさらに踏み込んだ内容で、まず自己愛人間の特徴を「7つの大罪」──恥を知らない、つねに歪曲し、幻想をつくりだす、傲慢な態度で見下す、ねたみの対象をこき下ろす、つねに特別扱いを求める、他人を平気で利用する、相手を自分の一部と見なす──とし、その理不尽な言動がどんな心理から生まれるかを丁寧に解きあかす。例えば彼らは恥の意識を受け入れられないため、自分が恥や嫉妬を感じると反射的に否認し、それを他者に属する性質としてことさらに他者を責めたてる。著者はこれを「恥の投げおろし」と呼ぶが、自己愛人間の最大の特徴である。本書は次いで、このパーソナリティがどうやってできあがるのか、彼らの毒から身を守るための現実的な戦略とは何かを説いていく。
 だれでも幼児期は自己愛人間だが、2、3歳で全能感はくずれ、徐々に等身大の自己を受け入れていく。だが、その時期に周囲の大人が極端に激しく恥じ入らせたり、あるいは何でも望み通りにさせてしまうと、長じてその子は自己愛人間になりやすい。精神の成長が2歳児レベルで留まってしまうのだ。
 本書は後半で「恋に落ちた自己愛人間」「職場の自己愛人間」「歳をとった自己愛人間」等も取り上げ、終盤では子供を自己愛人間にしないための方策を論じている。「自己愛社会」と言うべき時代に必須の一冊。

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