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2009年4月21日 (火)

金賢姫からの手紙

1709






西岡力・趙甲済 著

四六判上製/二四八頁/定価一五七五円/二〇〇九年四月

●なぜ二十年前の事件について再び語るのか
 去る三月十一日、元北朝鮮工作員の金賢姫氏と、金氏の日本語教師だった田口八重子さんの兄の繁雄さん、息子の耕一郎さんが韓国の釜山で面会を果たしました。金賢姫氏は大韓航空機爆破事件の実行犯として韓国で死刑判決が下されたのち、恩赦をうけ、九七年まで情報機関(安企部)につとめ、同捜査官と結婚して二児をもうけました。ひっそりと暮らしていた金氏ですが、二〇〇一年十一月、カトリックの人権団体が開いた記者会見を皮切りに「大韓機事件は韓国の自作自演、金賢姫はニセモノ(北朝鮮の工作員ではない)」という、北朝鮮の強弁をなぞったかのようなキャンペーンが韓国内で始まり、〇三年秋、テレビの三大ネットがこれに加わって金氏への攻撃が激しさを増して以降、避難生活を余儀なくされました。
 昨年秋、金氏は韓国の前国会議員に手紙を書き、この間、メディアや国家情報院(安企部の後身)から加えられた迫害を生々しく語り、その背後には親北傾向の前政権の意思がはたらいていたとの見方を示し、田口さんの息子に会って話がしたいと希望を伝えました(これが面会につながります)。金氏があえて沈黙を破り、みずからの苦境を語り、二十年前の事件について再び語るのは、理不尽なキャンペーンの首謀者の責任を問うためですが、日本にとって重要な意味をもつのは、金氏が公けに発言を始めたことで、大韓機事件と日本人拉致の結びつきに新たな光があたり、北朝鮮の意図がはっきりと浮かびあがってきたことです。

●田口八重子さん、横田めぐみさん〝死亡〟の謎を解明
 本書はこの金賢姫氏の手紙、金氏の信頼厚い韓国人ジャーナリスト趙甲済氏による単独インタビューを収録。西岡力「救う会」会長代行と趙氏が、飯塚さん父子との面会にいたる日韓の動きを追い、西岡氏がこれらを総合して、「なぜ北朝鮮は田口八重子さん、横田めぐみさんを〝死亡〟と言い、抑留しつづけるのか」という拉致問題最大の謎を解き明かしたレポートです。
 謎の解明は第2章に詳述されています。端的に言えば、国交正常化で百億ドルとも言われる〝賠償金〟を日本から引き出すために拉致は認めるが、大韓機事件にかんして金正日の責任は絶対に認めないことが北朝鮮の大方針であり、金賢姫氏の身分は何としても否定しなければならないということです。田口さんを帰せば、金氏の供述どおり金正日の指令によって爆破テロがおこなわれたことが再確認され、金正日はテロリストそのものになります。韓国での金賢姫ニセモノ・キャンペーンが、小泉訪朝と軌を一にしていたのもその一環と考えられます。
 また、めぐみさんについて、金賢姫氏は趙甲済氏のインタビューに答えて、同僚工作員金淑姫の日本語教師だったと述べ、金淑姫から、田口さん、めぐみさんとともにある招待所で生活していたと聞いたと証言しています。金氏のこの証言は、帰国した蓮池夫妻、地村夫妻の証言(本書で初めて紹介)と完全に一致します。めぐみさんを帰せば金淑姫と金賢姫氏の線がつながり、田口さんの場合と同様の結果を招いてしまうのです。
 金賢姫氏が表に出てきたことで北朝鮮の狙いが判明したことは、拉致問題解決に向けての大きな一歩であり、その意味ではまさに〝歴史的〟なレポートと言っても過言ではありません。

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