« 地侍の魂――日本史を動かした独立自尊の精神 | トップページ | 絶望の中で自分に言い聞かせた50の言葉 »

2009年5月21日 (木)

全国鉄道事情大研究〈中国篇2〉

1711








川島令三

四六判/並製/288頁/定価1995円/2009年5月

新幹線に見放された主要駅へのアクセスを改善するよう具体策を提示するとともに、
「瀬戸内マリンビュー」「SLやまぐち」号等のジョイフルトレインも詳しく紹介。

 シリーズの26冊目となるこの『中国篇2』では、ご覧のように中国地方の西側の19路線を取り上げました。本篇をもって関東圏以西の路線はすべて取り上げられ、残るのは東北と北海道の路線ということになります。
 この3月にJRではダイヤが改正され、本篇が扱うエリアの路線でもかなりの変更がありました。山陽線では昼間時に1時間毎に走っていた快速「シティライナー」の本数が削減され、岡山―福山間の快速「サンライナー」の本数も同様に削減され、宇部線では快速「のぞみリレー」号が廃止され、山口線では快速「やまぐちライナー」が廃止されて普通となりました。
 このような、いわゆる後ろ向きのダイヤ改正をどう見るべきでしょうか。著者は「後退思想」によるものと断じています。すなわち「国鉄の影の部分、鉄道運営のやる気のなさまで継承してしまった」せいであり、「ついにはJR西日本の路線の多くが廃止になってしまう可能性すらある」とまで慨嘆しています。
 福塩線の非電化区間、芸備線、木次線、三江線など、山間部を走る路線では崖崩れなどを恐れて速度を25キロに制限している区間がかなりあります。しかも、このような制限個所は年々増えているので、所要時間も年々伸びています。
 これは崖の法面を強化する工事を施さずに放置しているからです。改善しようとせずに腕をこまねいている――これも後退思想の現れといえるでしょう。「こんなことでは乗客から敬遠され、やがて廃止になってしまう。というよりも、大きな崖崩れが起こって、やむなく廃止となる事態を待っているかのようである」と著者は憂えています。
 ちなみに25キロ制限というのは、この速度であれば崖崩れや落石があっても、その手前ですぐに停車できるし、乗り上げたとしてもダメージが小さいということです。
 JRに苦言を呈する一方で、広島電鉄や一畑電車が利用増を図るために努力していることを高く評価し、特に広島電鉄については頻繁運転や3~5車体連節で走らせていることを称え、改善すれば利用される好例として紹介しています。
*   *   *
 それぞれの路線については、現状がいかに嘆かわしくても、あるいはそれほどでなくても、著者はその路線の特徴に合わせた何らかの改善策、あるいは活性化策を提示しています。以下、例を挙げてみます。
 山陽線については、新幹線と連携した新たな快速を設定して、新幹線駅が併設されていない主要駅へのアクセスを改善するよう提言しています。
 芸備線については、木次線とともに高速化して便利な陰陽連絡にすること。伯備線とともに陰陽連絡を担う路線として機能すれば、それなりに便利になるからです。なお、高速化とは、軌道を強化して高速で走れるように改善することです。
 可部線は黒字路線ですが、LRT化して広電市内線に乗り入れてはどうかと提案しています。広島の都心に直通することで非常に便利になるからです。
 錦川鉄道については、岩国―新岩国間にシャトル列車を走らせるよう提言しています。岩国から新幹線を利用するのがずっと便利になるからです。
 小野田線は市街地を走っているのに駅間が長く、運転間隔も長い。駅の数を増やして頻繁運転を行い、都市内交通機関として役立てるべきです。
 山陰線の益田以西では普通列車しか走らず、しかも過疎運転なので、萩や長門市に行くのはとても不便です。これを便利にするには山口線と美祢線を通る循環特急を走らせる必要があります。
 これらの著者の提言が今後の鉄道の改善のために生かされれば幸いです。
 なお、本篇で扱うエリアの路線には4種のジョイフルトレインが走っています。呉線の「瀬戸内マリンビュー」、山陰線の「みすゞ潮彩」、木次線の「奥出雲おろち」、山口線の「SLやまぐち」号です。これらの観光列車についても詳しく紹介していますので、利用する際の参考にして下さい。

« 地侍の魂――日本史を動かした独立自尊の精神 | トップページ | 絶望の中で自分に言い聞かせた50の言葉 »

書籍・雑誌」カテゴリの記事