« ブラックホールを見つけた男 | トップページ | 「国家」の復権
――アメリカ後の世界の見取り図 »

2009年7月21日 (火)

深い呼吸で「心」が変わる

1719






龍村修=著 角口美絵=イラストレーション

四六判並製 240頁 定価1470円 2009年7月

科学的にも効果が証明された〝東洋の叡智〟がぎっしりとつまった一冊!

●深く、ゆったりとした呼吸の効能
 ふだん当たり前のこととして行っている「息を吸い、息を吐く」という行為に、もっと意識を向け、正しい呼吸の仕方を身につけて、心身をより良い状態にしようと提案したのが、ヨガ指導の第一人者である龍村修氏の前著『深い呼吸でからだが変わる』(小社刊)です。この本によって、改めて呼吸の大切さを知ったという読者も多いかと思います。龍村氏がこれまでの経歴をふまえて考案した正しい呼吸の仕方とは、腹式呼吸と胸式呼吸を統合し、吐く息のほうにポイントを置くというもの。別な言葉で言うと「深く、ゆったりとした呼吸」。これによって、横隔膜や胸郭を最大限に拡張・収縮させ、空気を肺のすみずみまで行き渡らせます。そしてもう一つ、東洋の伝統的な身体観で言うところの「氣」(=生命を活かすエネルギー)の出し入れをイメージしながら行う呼吸です。龍村氏はこれを「浄化呼吸法」と呼んでいますが、全身に張りめぐらされた「氣」の流れが滞ることなく、スムーズに流れる効果があると説いています。

●セロトニンの分泌を増やし、免疫力を高める
 本書は、本能・感情・理性といった人間のメンタルな側面と呼吸の関係を取り上げ、ヨガの根源的な考え方にもとづく独自の解釈を加えたうえで、右にあげた正しい呼吸法(第一章・実践篇)、そして、「集中力を身につける」「利己心を捨てる」「マイナスの感情とうまくつきあう」「恐怖心に打ち勝つ」「決断力をつける」など十一のケースを想定して、これらに効果的な呼吸の仕方を紹介したものです(第三章・実践篇)。
〝龍村式〟呼吸法がメンタル面にも有効なことは、医学的にも検証されています。東邦大学医学部統合生理学教授・有田秀穂氏の実験データによれば、龍村式ウォーク呼吸法を二十分間続けると、気分や集中力に影響する脳内の神経伝達物質セロトニンの分泌が、二倍近くふえた由。有田教授によると、鬱傾向、ノイローゼ傾向にある人は、このセロトニンが不足した状態にあるとのことです。また、龍村氏によれば、深く、ゆったりとした呼吸は、免疫力を高めるカギを握るものでもあるといいます。免疫力の低下の要因の一つに不平・不満、怒り、恐れといった〝マイナス感情〟にとらわれることがあるといいます。こうした感情を上手にコントロールし、心が安定した状態をつくりだすためには、正しい呼吸法が大いに役立つということです。

●生活のなかに自然のリズムを取り戻す
 年間の自殺者が十年連続して三万人台にのぼり、その動機や原因として鬱病の割合が大きくなっていると報じられています。じつに悲しむべき事態です。身体をあまり動かさずにすむ生活、頭や神経ばかりを使う生活、一日二十四時間活動可能な生活――便利な生活を享受できるということは、一方で人間が本来もっている自然のリズムを狂わせることでもあり、こうした生活のあり方に伴うストレスが心の問題を生み出す背景にあるのかもしれません。龍村氏は、視聴覚的刺激が強すぎる環境に取り巻かれている子どもたちに、体育の授業のなかで呼吸の仕方や、「氣」のおさめ方を教えるべきではないかと述べています。それによって自然のリズムを体得させるということでしょう。第二章では、呼吸の仕方だけでなく、早寝早起きや伝統食の効用、「半断食」の勧めなど、生活のなかに自然のリズムを取り入れる方法も紹介されています。
 科学的な裏付けをもつ〝東洋の叡智〟がぎっしりつまった一冊と言えます。

« ブラックホールを見つけた男 | トップページ | 「国家」の復権
――アメリカ後の世界の見取り図 »

書籍・雑誌」カテゴリの記事