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2009年7月21日 (火)

「国家」の復権
――アメリカ後の世界の見取り図

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ユベール・ヴェドリーヌ・著 橘明美訳

四六判上製/200頁/定価1890円/2009年7月

●「歴史の復讐」に苦悶する世界への処方箋
 本書はフランス外交の第一線で長く活躍した国際政治の専門家ユベール・ヴェドリーヌの著書Continuer  l’Histoireの日本語版です。著者が外相を務めていた時期(1997~2002)に起きた9・11後のアメリカの対テロ戦争では、「同盟すれども同調せず」の姿勢を貫いたことでも知られています。
 この本の原題「歴史を続けること」は冷戦終結時に喧伝された「歴史の終わり」を踏まえたもので、著者は「歴史の終わり」が構想した世界がついに実現しなかったこと、それどころかそうした考え方にもとづく原理主義的な外交が、その後の世界をさらなる混迷に導いたことを明快に論じています。
《理想世界》の夢から覚めたわれわれが、世界を少しでも良い方向に向かわせるために不可欠なのが「機能的な国家」だと著者は主張します。どれほど国際的なシステムが整備されても、国家が機能不全に陥ってしまえば、今日の世界でその役割を代行できる主体は存在しないのです。著者は、こうしたリアリズムをもとに21世紀世界の見取り図を巧みに描いてみせます。本書が複雑きわまりない世界を読み解くためのよすがとなることを願ってやみません。

[本書から]
●万能の「世界政府」を夢見ることはやめるべき。それは誰によって構成され、監督される組織なのだろうか。「世界政府」が暴走したら、逃げ場はなくなる。
●NGOなどによる国際市民社会にも国家間の場合と同じ力関係が働いている。有力NGOはほぼ米英の組織であり、中国はGONGO(政府系非政府組織)を巧みに利用している。そもそも国連加盟192カ国中、130カ国近くにはNGOが存在しない。
●どれほど閉鎖的に見える社会にも民主化の潜在力は隠されている。外圧による強引な「民主主義」の導入は、欧米への反感を育むばかりか、この民主化への潜在力をスポイルしかねない。

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