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2009年9月24日 (木)

中国市場に踏みとどまる!
――日本企業の勝ち残り戦略

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上場大(かみじょう・ひろし)著

46判並製/216頁/定価1575円/2009年9月

迷える日本企業に精緻な情報と懇切なアドバイスを提供する
「中国ビジネス最前線レポート」!


●進むか、引くか。岐路に立つ日本企業

 グローバル規模の金融危機の波は各国に等しく及び、中国もその例外ではありません。なかでも沿海部が受けた打撃は甚大で、輸出加工業の工場は六割が操業停止・短縮に追い込まれている由。おりしも中国は、「世界の工場」からの脱皮をはかって、高付加価値の自前ブランドをつくる方向へと転換しつつあり、「作って売る」だけの外資はもういらないと言わんばかり。外資への税制上の優遇措置は二〇〇八年に廃止されました。さらに、事業戦略を左右しかねない「独禁法」の制定、労働コストを引き上げる労働契約法の改訂等々が追い討ちをかけています。撤退するにしても清算に時間がかかります。清算後は一五%のみなし所得税もかかる。リストラには百人あたり一億円の費用が必要になる――。外資への風当たりが強まるなか、中国に進出した日本企業の多くは今、このまま進むべきか引くべきか決断を迫られているのではないでしょうか。

●足で稼いだ最新の情報を提供
 著者の中国ビジネスに対する考えはタイトルにあるとおり。中国市場に踏みとどまり、〝総力戦〟で業績回復にあたり、次のチャンスに備えるべきということです。八%の経済成長目標を掲げているのは中国だけ。四兆元(約六十兆元)の公共投資、五兆元の新規融資の波及効果も浸透しだしている。パナソニックや東芝のように中国だけで一兆円規模の売上を計上する企業もある。トヨタも〇九年の売上で前年を上回る見込みなのは中国だけと言われる。進出企業は二万社を数え、最大の輸出先でもある。日本は中国市場を捨てられないのだと著者は説きます。
 では、その中国でビジネスを成功させるためには、どうすればいいのか。まずは「知る」ことが一番。ということで本書は、市場やビジネス環境の変化について最新の情報を提供することを目的に書かれました。著者は日経ビジネスオンラインのヒット連載〈中国羅針盤〉を執筆中のエコノミスト。足で稼ぎ、豊富な国際経験をもとにした複眼分析を得意とします。本書でもそれがいかんなく発揮され、共産党の変貌ぶり、G2の内実、保護主義への傾斜といった大状況から、リストラの進め方、闇リベート対策、行政への食い込み方のノウハウまで、迷える日本企業に資するところ大の情報が盛り込まれています。

●内陸部市場をいかに攻略するか

 今後の中国ビジネスの成否のカギを握るのが内陸部の市場。政府のインフラ投資や農村部、地方都市への家電製品の普及をめざす「家電下郷」政策の向かう先は主に内陸部です。沿海部を中心に事業展開していた日本企業はここで活路を見出せるのか。著者は第4章、5章でその可能性を検討し、価格や民族企業に有利な入札の点から、政府の景気刺激策の恩恵にあずかるのは、なかなか難しいと見ています。とくに内陸部での日本製品の認知度はゼロに等しい。しかし、これは逆に言えば、日本人には未知の市場がまだまだあるということ、と著者は言い、新市場開拓のための人脈づくり、中央での根回しのやり方など実践的なテクニックを披瀝。さらに、そんな内陸部でこれから有望な業種として、日本的なサービスを活かしたレストランチェーン、そして物流、とりわけコールドチェーンを挙げています。
 精緻な情報と懇切なアドバイス。北京駐在の経験から中国ビジネスの厳しさを知る著者は、これに携わる多くの人に本書を読んでもらい、役立ててほしいと繰り返し述べていますが、そうした熱意がひしひしと伝わってくる「中国ビジネス最前線レポート」です。

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