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2009年9月24日 (木)

わがままこそ最高の美徳

1731






ヘルマン・ヘッセ著
フォルカー・ミヒェルス編
岡田朝雄訳

四六判上製/二八〇ページ/定価一八九〇円/二〇〇九年九月

「わがまま」は自分の個性を大切にして、他人に惑わされずに生きるために必要だ。 
ヘッセの生き方は現代にも通ずる

  ヘルマン・ヘッセは二十世紀前半に活躍したドイツの文豪であり、『車輪の下』で今もなお多くの人に読まれている作家である。彼の生きた時代のドイツは二つの世界大戦における敗北の大激動期であった。共産主義革命とナチスによる破壊がすさまじく、また資本主義による荒廃もひどかった。牧師の家で育ったヘッセは詩人になる夢を捨てられず、神学校から逃亡し、父親との相克を乗り越え、一人前の作家になる。第一次世界大戦では反戦主義を貫き、非国民呼ばわりされる。ナチスには早くから警鐘を鳴らし、自身はスイスへ移住する。他から強制されることを嫌うヘッセは「わがまま」という性格をこよなく愛し、読者に勧めている。この本は現代人も見習うべき、その人生観をエッセイや詩により浮かび上がらせた本で、V・ミヒェルスが編集したものである。既刊の『庭仕事の愉しみ』『愛することができる人は幸せだ』などのテーマ別エッセイ集の一つでもある。
 「両親への手紙」「ある共産主義者への手紙」など圧巻のエッセイ
 本書中の圧巻というべきエッセイは、まず15歳のヘッセが精神病院に監禁されていたとき父親へ送った手紙「両親への手紙」である。すでに作家としての才能を発揮しつつある少年ヘッセが切々とつづる内容は何ものにも抗する不屈の意志が表れている手紙文の傑作である。また表題作「わがまま」の軽妙な感覚もさることながら、「ある共産主義者への手紙」「一九三三年七月の日記より」の二つのエッセイにはどんな政治状況にあっても自説を曲げなかったヘッセの面目躍如足るところが表れており、政治エッセイとして今読んでも十分に面白い。
 頑固、強情、わがままを礼賛する文豪による傑作エッセイ集である。

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