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2009年11月

2009年11月30日 (月)

保守の怒り
 ――天皇、戦争、国家の行方

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西尾幹二、平田文昭 著

四六判上製/三三六ページ/定価一八九〇円

「保守」の自己欺瞞、ゴマカシこそ今日の保守勢力衰退を招いたと指摘。日本と皇室の危機の構造を率直に、大胆に指摘した、いまもっとも読まれるべき本質的論議。

民主党大勝と自民党溶解はなぜ起きたか
 昨年のリーマン・ショック以来の金融危機と、この夏の選挙での民主党大勝を経て、時代が新しい局面を迎えていることは明らかでしょう。しかし、自民党を拠り所とした保守勢力の衰退や、中庸なナショナリズムの希薄化が、今、国家の解体や荒廃をもたらしていると見る人は少なくありません。なぜ、戦後あれほど普通の市民が期待をかけ支持してきた良質な保守が今日の惨状を呈し、国家の危機をもたらしているのか。本書は従来、保守の論客や運動家としてその渦中にいた二人の著者による「怒り」の対論です。

多極化する世界のなかで日本は生き残れるか
 金融危機以降のアメリカの弱体化と米中協調路線の中、日本は冷戦体制や戦後の占領体制からの脱却を求められています。従来、自民党の党是は改憲と独立の回復であったはずです。しかし、これがいつのまにか忘れられ、現実路線という名の欺瞞によって、中曽根から安倍にいたる擬似的な保守政権が妥協を繰り返し、本質的な論点をあいまい化してきた功罪は大きい。本書ではかなり踏み込んで、戦前の歴史の肯定、親米的な植民地的知識人の批判、今上天皇の発言への危惧、保守運動の中枢にある宗教的カルトの弊害、最後に民主党の政策と、日本の良質な伝統を解体しようとする勢力への警鐘まで、あまりマスメディアでは論ぜられないことまで、率直で大胆な対論が繰り広げられます。いま、時代への危機感を抱く人すべてにとって必読の刺激に満ちた本といっていいでしょう。

2009年11月24日 (火)

総崩れのイギリス それでも踏ん張るイギリス人

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マークス寿子【著】
四六判/上製/248ページ/定価1680円(税込)

英国のバブル崩壊と労働党議員の堕落
  リーマン・ショックはいうまでもなくイギリスも襲った。それは日本よりもすさまじいものだった。日本は1991年からの約10年間バブル崩壊を経験した。拓銀はじめ長銀、山一証券等の破綻は記憶に新しい。それが20年後に住宅バルブに沸いていた英国をリーマン・ショックとともに襲ったのである。スコットランド銀行はじめ幾つかの伝統ある銀行が破綻し、国有化された。経営者は破綻前に信じられないような退職金を受け取り、それが国会をも巻き込んで世論を沸き立たせる。著者も預金者としてこの崩壊に直面したのである。銀行員の質的低下、対応の悪化、英国の伝統ある金融取引システムが崩壊していく有り様が著者の体験を通じてつぶさに描かれる。本書の読み所である。
 さらに民主党が手本としてやまない労働党議員を主体とした経費の水増し請求問題が論じられる。ポルノビデオ代を請求する議員たちの生々しい生態が生き生きと語られる。このような不正請求を行うのは労働党議員が主で、保守党議員にはあまりいないという。

英国メディアの現状報告
  この本のもう一つのテーマは英国メディアの現状報告である。これがまたつまらないバラエティ番組ばかり見せられているわれわれにとって非常に参考になる。
  ここではまず、極貧の女性が「ビッグ・ブラザー(ジョージ・オーウェルの未来小説に出てくるスターリンを模した独裁者)・ショー」という番組に出演して一躍大金持ちになり、遂には自分の突然の死の瞬間までをテレビに取材させるジェイド・グッディという30代の女性の物語や高度な知識を競うクイズショー「ユニバーシティ・チャレンジ」に登場、最高点を獲得したオックスフォード大学の才媛の物語が生き生きと描かれる。

福祉国家の苦悩
  次に出てくるのが、一家4人の体重が合わせて500キロという超肥満家族の物語である。この家族、肥満を理由に働かないで全員国の福祉の世話になっている。当然納税者から何でこのこような家族を税金で養わなければならないのかという苦情が寄せられる。
  さらに驚くのは13歳の父親と15歳の母親の話だ。ここで取り上げられるのは家庭の崩壊である。貧者の救済のために作られた福祉手当が私利私欲を増進したり、不健全な家庭を促進する結果になっていることが語られる。日本はいま議会制度ではなく、このようなことを英国から学ぶべきことを著者は示唆している。
  最後に著者はダンケルクの精神について語っている。ダンケルクの精神とは第二次世界大戦の緒戦で英軍が北仏、ダンケルクに追い詰められ、このとき英国は民間の小さな船まで動員して、ダンケルクからドーバーへと撤退をはかった。著者は英国はいま、このダンケルクの精神で立ち直るだろうと示唆するのである。
  英国を手本とする現政権が学ぶべき事実満載の快著と言っていいだろう。

1万人の実例からわかった 
元カレと復縁できる方法

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復縁アドバイザー 浅海(あさみ)=著

四六判並製/232頁/定価1,260円/2009年11月

●超人気復縁アドバイザーが、実例から培ったノウハウを大公開!
 復縁のノウハウ本は、これまでにもいくつか刊行されてはいますが、恋愛エッセイストやライターが心理学の知見を応用して書いたものがほとんどでした。
 本書は、復縁相談を専門に請け負っている現場のアドバイザーが、実際に使ってきたノウハウを一挙に公開した画期的な1冊です。
 それも、これまでに受けてきた相談数は1万件以上にものぼるため、膨大なノウハウの蓄積があります。
 たとえば、「メールを返してくれない彼と連絡を取るにはどうするのがベストか」「着信拒否をされた場合はどうすべきか」「『都合のいい関係』から本命になるには?」「新しい彼女がいる場合はどうするか」「年齢差のあるカップルの復縁は?」……などなど、ありとあらゆるパターンにおける「秘策」が惜しげもなく紹介されています。
 従来「復縁」というとポジティブなイメージでとらえられることがあまりありませんでしたが、著者によると、純粋な人ほど惹かれる魅力的な恋愛の形であり、自信をもって前向きにトライしてほしいといいます。
 順を追って読むうちに、人間心理の理解が深まり、恋愛の極意が身につく本書、寒い冬を心温かく送るためにもぜひおすすめしたい1冊です。

【本書より】
◎未練はないことを示さないと、スタート地点に立てない
◎自分の言葉で伝えるより、第三者を使って「いい情報」を流す
◎プライベートはできるだけ隠して、情報を「チラ見せ」する
◎スポーツや習い事、人付き合いなど、付き合っていたときとは別人の部分を見せる
◎喪失感を演出して「失うにはもったいない相手」と思わせる
◎「都合のいい関係」は断ちきって、一度、友だちに戻らないと復縁できない
◎着信拒否されたときは、時間をおいてから「CCメール」で機種変更の連絡を
◎自分から復縁を迫ったら、うまくいくものもうまくいかない

野村克也は本当に名将か

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工藤健策・著
四六判並製/240頁/定価1470円/2009年11月


●24年に及ぶ監督生活の光と影を徹底検証!

 楽天監督としてチームを球団初のクライマックスシリーズ進出に導いたにもかかわらず、ついに監督の座を追われることになった野村克也。野球ファンの多くが、この楽天球団の決定に疑問をもったにちがいありませんが、彼の24年間に及ぶ監督生活の功罪を検証した本書をお読みいただければ、そんな疑問は氷解することでしょう。一人の監督が名声を得る陰で何が起こっていたのか。球界を騒がせ続けた個性派監督のやり口を、豊富な取材経験をほこるベテランスポーツライターが白日のもとに晒す刺激的な一冊です。

[本書から]
●野村は自分から選手の獲得に動いたり、ファンのための球界改革を提言したりすることがなかった。また「ボヤキ」によって、本来なら監督が背負うべき責任を選手・フロントに転嫁しつづけた。
●自慢の「ID野球」と「再生工場」も、その効果を検証するとかなりの誇張があることがわかる。ヤクルト時代に「ID野球」で何度も優勝できたのは、阪神というカモになり続ける球団が存在したからだった(だから阪神では勝てなかった)。
●野村が目先の勝ちにこだわって酷使したために潰された名投手は枚挙にいとまがない。楽天監督を続けていたら、岩隈、田中も危なかった。
●野村がヤクルト監督に就任すると、それまでリーグ最少だったヤクルトの与死球数が激増した。野村独自の「内角への意識づけゾーン」と関係がある。それなのに自著で「死球でチームの品格が見える」などと巨人批判を展開している。
●野村は自著の中で、事実関係すら平気でねじまげて自らの過去を美化している。

日本開国
――アメリカがペリー艦隊を派遣した本当の理由

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渡辺惣樹(わたなべ・そうき)著

46判上製/264頁/定価1890円/2009年11月

太平洋のシーレーン構築が狙いだった! 開国の様相を一変させる画期的な解釈を提示!

●手付かずの米側史料を本格的に取り上げる
 著者の渡辺惣樹氏は伊豆下田の出身です。毎年下田で開かれる「黒船祭」には米海軍が参加するとのことで、十代の頃、艦上でアメリカの水兵さんたちと交流したことから、著者は英語に対する興味をかきたてられたと言います。ペリーが九隻の艦隊を率いて来航し、日本に開国を迫り、日米和親条約を結んでから二年後の一九五六年、下田の町はずれにある曹洞宗の古刹・玉泉寺に初代米領事タウンゼント・ハリスが赴任してきます。お供は通訳のヒュースケンただ一人。ハリスは通商条約締結という重大な任務を負っていましたが、彼は元来教育行政を専門とする、いわば〝ノンキャリ〟外交官です。身体が衰弱するほど孤軍奮闘したハリスが、ようやく通商条約締結にこぎつけたのは赴任から三年後の一八五九年のことでした。
 ペリーの威容とハリスの孤独な戦い――。そこに示された対照的な対日姿勢が、解けない謎となって、ずっと心にわだかまっていたという著者は、一九八二年にカナダに移住して以来、折に触れてロスチャイルド・アーカイブスなどアメリカの史料館を訪れ、日本開国にかかわった人々の手紙やメモワール、当時の新聞記事などなど、その多くが手付かずのままだった史料を渉猟します。そしてこれらの史料を読み込むうちに、故郷下田で抱いた疑問はすこしずつ解けてゆき、さらに著者は、日本に開国を迫った米国の「真意」を見出すのです。本書は日本側の史料をも合わせて日米双方の関係者の動きを点描しながら、従来の通説(米国は鯨油をとるため鯨を追って日本にやって来た)とはまったく異なる狙いが米側にあったことを明らかにしていきます。

●中国の市場と安価な労働力を求める
 米国側の関係者のなかでもっとも重要なのは、ニューヨークの弁護士出身のロビイストで、ネイサン・メイヤー・ロスチャイルド&サンズのアメリカエージェントだった、アーロン・パーマーです。本邦初登場と言うべき名前ですが、このパーマーこそ、日本を深く研究し、開国のシナリオを書き、「日本に漂着した米捕鯨船員が虐待されている」とのプロパガンダによって米世論を砲艦外交へと向かわせ、日本遠征の指揮官としてペリーを推薦した人物なのです。そのパーマーは何を狙って開国のシナリオを書いたのか。クレイトン国務長官宛の書簡にある次の一文が彼(=アメリカ)の狙いを端的にあらわしています。
「日本の海がハイウェイ(highways)となり、大動脈(thoroughfares)となったとき、アメリカの捕鯨船や商船だけでなく他の国も平和的な商業的繁栄を享受できる」
 これを受けて著者はこう書いています。「海のハイウェイは現代ではシーレーンと表現されています。日本の海を利用する安全なシーレーンの構築でアメリカが享受できる便益は他国の比ではありません」。なぜ日本の海が安全でなければならないのか。アメリカの目はその先の中国にむけられていました。中国はアヘンその他の商売で利益のあがる市場であり、大陸横断鉄道建設のための安価な労働力の供給源であると見ていました。平和な海を確保するためには日本と早急に和親条約を締結し、ニューヨークと上海を二十五日間で結んで情報面でイギリスを圧倒する。しかしビジネスの点で言えば日本は魅力に乏しく、通商条約締結を急ぐ必要はなかった。このアメリカの「真意」を知れば、ペリーとハリスに見られる対日姿勢の違いも納得できるのです。結局、「鯨」は強硬策による日本開国で米国世論を統一するための口実にすぎなかったのでした。
 日本開国の様相を一変させる、まさに「新・開国史」と呼ぶにふさわしい一冊と言えます。

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