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2009年12月

2009年12月21日 (月)

プロレスは生き残れるか

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泉直樹・著

四六判並製/224頁/定価1575円/2009年12月

●「三沢光晴の死」からプロレスの現状を考える
 2009年6月13日、平成マット界の一翼を担っていた名レスラー、三沢光晴が試合中に死亡するという衝撃的な事件が起こりました。この事件は彼個人の過酷な競技人生だけでなく、現在のプロレス界が直面している厳しい状況にもスポットライトを当てることとなりました。
 本書は、自身もかつて熱心なプロレスファンであったルポライターが、「三沢光晴はなぜ死んだのか」という問題意識をもとに、プロレス界の現状および展望をリサーチした本です。全日本プロレスのエース兼社長で、しばしば三沢選手と並び称された武藤敬司選手ほか、リングドクター、レフェリー、フロント、プロレス雑誌記者とさまざまな関係者へのインタビューを行ない、プロレス生き残りの条件を考察しています。長年、独特の価値観を育んできたエンターテインメント「プロレス」は、これからどこに向かうのか。元ファンも含め、多くのプロレス好きに手にとっていただきたい一冊です。

[本書から]
●1989年(平成元年)に81人だった日本のプロレスラー数は、平成に入り多団体化の流れの中で急増し、10年後の1999年には326人、20年後の2009年には353人になっている。
●プロレスラーの「旬」の時期は、他スポーツの選手が引退の時期を迎える30代(半ば)であるケースがほとんど。           
●1989年には全プロレスラーの43%を占めていた20代は、2009年では31%に急減。次世代の育成に不安を感じさせる。
●リングドクターが全興行に随行している団体はゼロ。経済的な問題が大きい。
●かつてプロレス団体の経営に不可欠といわれた地上波テレビだが、いまやテレビ朝日が深夜に30分枠で中継しているのみ。一方で地上波に頼らないさまざまな取り組みが進んでいる。

「偉大なる将軍様」のつくり方
――写真で読み解く金正日のメディア戦略と権力の行方

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辺映昱(ピョン・ヨンウク)=著 荒木信子=訳

46判並製 256頁 定価1680円 2009年12月

統治のためのイメージ操作の手法を
プロカメラマンの視点から解析した初めての本!


○「一号写真」は多くを語る

 北朝鮮では金日成(主席)と金正日(国防委員長、「敬愛する将軍様」)の写真を「一号写真」と呼ぶとのこと。本書は、建国以来、党機関紙『労働新聞』をはじめ北朝鮮の新聞、雑誌に載った「一号写真」を丹念に調べ、金正日がどのように写真を活用してきたかを検証したものです(原題『金正日.jpg』)。著者の辺映昱氏は韓国の有力紙『東亜日報』の現役の写真記者です。本書を訳した荒木信子さんの「あとがき」によれば、意外なことに写真を通じての北朝鮮研究はこれまでなかった由。北朝鮮発の写真や映像には何らかの作為が加えられているのは明らかで、正確な情報を得る手がかりにはならないと考えてしまうせいでしょうか。しかし、「解説」の執筆者で、『中日新聞』ソウル特派員時代に辺氏にインタビュー取材をしたこともある福田要氏が書くように「一号写真」はその掲載の仕方を含めて実に雄弁であり、情報が満載されているのです。たとえば次のように、金日成から金正日への権力の継承がいつ完了したかが読み取れます。
 金日成死去の直後一九九四年七月、八月にはその写真が新聞に集中的に載り、九月から翌九五年五月まではほぼ消え、同時に金正日の写真が十日に一度の割合で登場→団結・統一の求心力の迅速な転換をはかる/九五年六月から再び金日成の写真が集中的に載り、七月からは父子のツーショット写真が掲載され始める→父のイメージを息子に重ねるプロセスが進行/九七年一月から金正日単独の写真が金日成の写真あるいはツーショットより多くなる→イメージの重ね合わせを通じた権力の安定的継承が金日成の死後三年経って仕上がる(詳しくは第1章―3)

○すべては権力の正統化のため

 大の映画好きとして知られる金正日は、写真や映像を使ったイメージ操作の効果を熟知し、これを政策レベルで遂行していることもわかります。金正日が宣伝煽動部門を掌握した一九六七年以降、北朝鮮の写真は変容しているのです。金正日の論文をもとにしたとされる「出版報道事業に関する党の方針解説」(八五年刊)では、「一号写真」について「いつも(金父子を)写真画面の中心位置」とし「明るく鮮明にしなければならない」と規定しています。金父子を誰よりも大きく明るく写し、必ず真ん中に置く。コンプレックス(金正日のシークレットブーツ等)を隠すアングルから撮る。クローズアップはご法度(代わりに肖像画を使う)。本書で取り上げられている「一号写真」(六七年以降のもの)はいずれも右の「党の方針」に忠実で、人民や指導者のいきいきとした表情は見られず、徹底した演出がほどこされています(五五頁の写真では〝画面中央の鉄則〟を守るために広角レンズと大型クレーンが使われていると辺氏は指摘)。演出といえば三三頁のパレード写真は圧巻です。通過中と見える車は実際には止まっており、そこに掲げられた父子の顔が描かれた旗は風でシワがよらぬよう男性が旗の端を持っています!
 金父子を絶対化・神格化して権力の正統性を主張し、それによって人民を統治する。映像のイメージ操作がそのための大きな要素になっていることを本書は教えてくれますが、二〇〇三年のユニバーシアード大会で「美女応援団」が金正日の写真が雨に濡れたといって大騒ぎしたことを見ても、その統治手法は成功していると言えそうです。
 アングルやライトの当て方、フォトショップ使用の有無など、プロカメラマンの視点での解析に加えて韓国側のイメージ操作にも思いをいたすなど、辺氏の叙述の仕方はきわめて公正で好感がもてます。「コロンブスの卵」ともいうべきアプローチによる斬新な北朝鮮研究と言えます。

堀秀道の水晶の本

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堀秀道著

46判上製/192頁+口絵24頁/定価1680円/2009年12月

◆美しくて、現代文明を支え、いたるところにある、水晶
 水晶というと、どんなことを思い浮かべるでしょうか。高価なもの、貴重なもの、役に立たない鑑賞品、自然にしか生まれ得ないもの……、と思う方も多いかもしれません。じつは、水晶はごくありふれた、世界中いたるところで採掘される鉱物で、人類との関わりも鉱物の中で最も古いと考えられています。また、役に立たないどころか、水晶は現代文明を支えており、私たちの生活は水晶なしにはまったく機能しないほど。時計や携帯電話、デジカメにパソコンなど、さまざまな機器に水晶は使われています。さらに、水晶は人工的に合成もされていて、日本は世界一の人工水晶生産国なのです。
 本書は、水晶がなぜ色づくか、なぜ独特の形状に結晶するのかなどの科学的性質から、歴史や地名などとの関係、さらに技術的側面まで、水晶の意外なほど豊かな世界を魅力的な文章で語りつくす本です。
◆急増する鉱物ファンの入門書としても最適。美しい標本写真36点を収録
 現在、鉱物ファンは急増しており、特に女性の割合が高いといいます。鉱物ファンもそれぞれで、金属系鉱物が好きな人など、好みが分かれますが、誰もが大好きなのが水晶です。「水晶に始まり水晶に終わる」ということなのか、水晶を入り口に鉱物ファンになる人も多いといいます。その水晶について、本書で縦横に語るのは、TV番組「開運! なんでも鑑定団」の鑑定員としてもおなじみで、鉱物ファンの必携書『楽しい鉱物図鑑』などの著作でも知られる鉱物界の人気者・堀秀道さん。口絵には著者のコレクションから選りすぐられた、さまざまな水晶の標本36点のカラー写真が収録されています。鉱物ファンなら上級者から超初心者まで興味を引かれる内容ですが、著者の人柄がにじみ出る軽妙な語り口で、エッセイとして、鉱物ファンならずとも楽しんでいただける一冊です。

●内容より
水晶がいろんなところで採れるのはなぜ?
水晶球の本物と偽物を見分ける方法
水晶が色づくのはなぜ?
水晶山、水晶峠、水晶トンネルなどの地名
水晶の標本の買い方、保存の仕方、楽しみ方
右/左、高温型/低温型など水晶の分類あれこれ
若い人がこれから鉱物学を学ぶにはどうすればいいか?

著者紹介  
1934年、東京生まれ。中学校時代より鉱物を愛好する。北里大学化学科助手、モスクワ大学地質学部留学を経て、鉱物標本の販売・分析・研究の機関、鉱物科学研究所を設立。長石の新種「ストロナ長石」をはじめ5種の新鉱物を発見、研究・発表し、これらの業績に「櫻井賞」を贈られている。理学博士。著書に『楽しい鉱物図鑑』『楽しい鉱物図鑑2』『楽しい鉱物学』(以上、草思社)など。

定年後のリアル
――お金も仕事もない毎日をいかに生きるか

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勢古浩爾=著

46判並製/240頁/定価1470円/2009年12月

◆「金、健康、生きがい」の3つの不安を吹き飛ばす本
 不況のいま、いかにして生きていくかという問題がクローズアップされている。とくに定年退職が迫った人に対してメディアは、定年後は「六千万円の貯えが必要」「孤独死にご用心」など多くの不安を語る。
 しかし本書の著者は、そうした先行きのことは、それほど思いわずらうべきではないという。いまの日本人は、メディアからの情報に振り回され、不必要なほど不安になってしまっているというのだ。
 たとえば貯蓄や健康状態の「平均」がどの程度かといった話が盛んに語られ、自らを引き比べて不全感を増している人も多いが、現実には「平均」は自分の生き方とはあまり関係のない情報であり、気にしすぎる意味はない。またアンチエイジングや若さを保つ方法が日々声高に喧伝されているが、本来、人は年を取ったら取ったなりの自分を認めていくのが自然であり、若さを過度に持ち上げる価値観自体がいびつだともいえる。
 著者は、そうした風潮を批判していきながら、実体のない「二十年先」までの不安などに振り回される必要はないと説く。人は死ぬのが当たり前、年を取ったら衰えるのが当たり前であり、そうした事実を正面から受け入れて、初めて本当の人生に出会える。そのうえで一日一日から得られる人生の喜びを享受して生きていくのが、定年後の理想的な生き方だという。
 さまざまな不安を打ち砕き、心をほっとラクにしてくれる本書、人生の後半戦をしっかりと地に足をつけて生きていくために必読の一冊である。

●内容より
モデルは小零細企業の会社員
老後の三つの不安――金、健康、生きがい
余命一年と思って生きる
仕事が大事なのは、仕事をしているあいだだけ
自分のプラスを数え上げる
   「どのように生きるのか」の完璧な答え………など

著者紹介  
1947年大分県生まれ。明治大学政治経済学部卒業。洋書輸入会社に34年間勤務ののち、評論活動に入る。『まれに見るバカ』(洋泉社・新書y)がベストセラーとなり話題になる。市井の一般人が生きていくなかで、運命に翻弄されながらも自身の意志を垂直に立て、何度でも人生は立てなおすことができると思考し、静かに表現し続けている。著書に『思想なんかいらない生活』(ちくま新書)、『結論で読む人生論』(草思社)など。1988年、第7回毎日21世紀賞受賞。

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