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2010年2月24日 (水)

大宮様と妃殿下のお手紙
――古きよき貞明皇后の時代

1749









榊原喜佐子(さかきばら・きさこ)・著
四六判/上製/288頁/定価1890円/平成22年2月

誤解されている貞明皇后の実像を世に知らしめたいという意図で書かれた本。
貞明皇后の未公開のお手紙を読みとくことで見えてくる戦前の皇室の豊かな文化や習俗。


故高松宮妃殿下のご遺志から妹の著者が執筆
 大宮様とは大宮御所に住んでいた貞明皇后のことで、大正天皇の妃、昭和天皇の生母である。妃殿下とは著者の姉、高松宮妃殿下喜久子様のことである。お二人はいわゆる姑と嫁の関係に当たる。貞明皇后は若くして大正天皇に先立たれ、その後戦争の大変な時期を越えて昭和二十六年に六十六歳で亡くなられた。昭和前期の皇室を陰から支え、宮中に絶大な影響力を持っていたといわれる人であるが、その素顔についてはあまり知られていない。なかなか優れた見識と胆力をもった方だったというが、逆に「神がかった狂信的皇国史観の持ち主」のように書いた最近の研究書もある。妃殿下はなくなる前に大宮様のことをもっとちゃんと知ってもらいたいと念願し、数通の大宮様からもらった手紙のコピーを著者に託していた。この本はこの手紙と高松宮妃殿下の葉書を往復書簡のように読み解き、当時の宮中の雰囲気や大宮様のお人柄などが浮かび上がるように構成されている。

手紙の文章から浮かび上がる闊達で親切な大宮様の人柄
 大宮様のお手紙はいわゆる「候文」で雁皮紙に達筆な筆で書かれており、いまの人には読みにくいのですべて口語訳を付した。昭和五年新婚の高松宮両殿下がヨーロッパ旅行に出かけた際に義理の母にあたる大宮様から妃殿下に当てられた手紙には旅先の健康を気遣い、もらった葉書の面白さに喜ぶ素直な感情が表れていて、普通の母親と変わらない。ただ文章自体は挨拶や前置きが長く、独特の言い回しが多用される宮中伝統のもので、その様式はきわめて興味深いものである。大宮様が生きた戦前戦中の皇室は厳しい時代でもあったが、皇室が最も輝いていた時代でもあった。著者は公爵徳川慶喜の孫にあたり、母親は有栖川宮家からきた実枝子様で、この方は大宮様とは小さい頃から親しかったので、皇室ではないが身近に大宮様の存在を感じられる立場にあった。著者の個人的な回想や寸評を挟みながら手紙を読んでいくと、意外に明るく、むしろさばさばした大宮様の人柄と当時の豊かな皇室の雰囲気がよくわかる。貴重な回想であると同時に、ほのぼのとした心温まるエッセイである。

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