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2010年6月

2010年6月21日 (月)

美しき姫君
――発見されたダ・ヴィンチの真作

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M.ケンプ、P.コット著/楡井浩一訳/四六判/上製/256頁/4色刷/定価2310円/2010年6月

「世紀の大発見」のすべてを、豊富な図版とともに、当事者が語る!
 1998年1月、NYのクリスティーズで1万9千ドルで落札された「19世紀ドイツの画家がルネサンス調を模した作品」は、じつはレオナルド・ダ・ヴィンチ自らの手による埋もれた傑作でした! この世紀の発見は昨年、世界中に報じられました。
 作品を目にした複数の専門家から、これがとんでもない傑作だという指摘がなされ、やがて本書の著者である、ダ・ヴィンチ研究の第一人者ケンプ教授と、美術作品の科学分析で定評のあるパリのリュミエール研究所で、徹底した検証が行われたのでした。その結論が「本物である」というお墨付きだったのです。

まるでミステリ小説のように解き明かされる真実
 リュミエール研究所は、最新の光学機器を用いて作品をあらゆる角度から分析します。これまでも『モナ・リザ』をはじめに実に1500点以上もの名画を分析してきた名門です。まず、本作の画材の鑑定から「19世紀」どころではなく「15世紀」だったことがわかりました。まさにダ・ヴィンチの時代の作品だったのです。
一方、ケンプ教授は絵の技法、描線や筆の運び、モデルの服装や絵のスタイル等、あらゆる角度から本作のモデルが15世紀イタリア、ミラノの若き女性であることを突き止めていきます。そして美しきこの姫君の、麗しくもあまりにもはかない悲劇を見出していきます。その手際はまるで上質のミステリ小説を読むかのごとくです。

ダ・ヴィンチの「指紋」が決め手のひとつ
 決め手のひとつは「指紋」でした。デジタル解析によって、絵の左上に「指紋」が発見されたのです。そこで絵画における「指紋」鑑定の専門家が登場、ダ・ヴィンチの別の作品から採取された指紋との高度な一致が確認されました。
こうした厳密な検証を経て、埋もれた傑作が私たちの目の前に姿を現したのでした。本書はそのすべてを豊富な図版とともに紹介する、美術史に残る一冊です。
 この『美しき姫君』の原画は、現在、スウェーデンで公開中で、近く日本でも美術展が開催される予定です。何よりもこの作品そのものが持つ、抑制のきいた美しさ、そこに秘められた儚げな哀しみは、見る人の心をとらえて離さないことでしょう。

ソフィー 9つのウィッグを持つ女の子

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ソフィー・ファン・デア・スタップ著 柴田さとみ訳
四六判上製/336頁/定価1680円/2010年6月

●ウィッグと共にガンを乗り越えた女子大生の赤裸々な闘病記
この本は2006年にオランダで出版されるや、奇跡のガン闘病記として忽ちベストセラーとなり、オランダ、ドイツを中心にさまざまなメディアで取り上げられて話題を呼んだ本の日本語版です。上記の国以外にも、フランス、イタリア、ポルトガル、リトアニア……その他、多くの国で翻訳されています。
著者は21歳のときに横紋筋肉腫(悪性度の高い筋肉のガン)と診断され、抗ガン剤の副作用で髪を失います。自分の頭を鏡で見て絶望的な気分になる著者でしたが、ウィッグを着けるようになったことで、その心に変化が起こります。9つのウィッグに9つの名前を付け、ウィッグに合わせてお嬢様、セクシー、乙女チック……といろいろなキャラクターを演じているうちに、いつしか著者はガンとの闘いの中に一種の生きがいを見出していくのです。そして、ウィッグによって生まれた9つの人格と同じように「ガン患者である自分」を受け入れられるようになった頃、彼女の体からガン細胞は消えていました。
いま、日本人の3人に1人はガンで亡くなっています。メディアには病院や治療法にかんする情報が溢れています。しかし患者がガンと闘う過程で直面する苦悩については十分に理解されているとはいえません。それらはときに非常にデリケートな問題を含んでいることもあって、表だって語られることが少ないのです。ウィッグ(かつら)の問題はまさにその一つです。著者は最終的にはガンを克服し、サバイバーとしてガン患者の本音を伝える立場となりますが、そこにいたるまでに彼女を苦しめつづけた若い女性としての生々しい欲望も包み隠さずに綴っているところが、この本の大きな魅力といえます。
ガンになったからこそ手にすることができた、一瞬一瞬を全力で楽しむ力。彼女のどこまでも前向きであろうとする精神が、多くの読者を勇気づけることを願ってやみません。

→本書特設ページへ

声に出して読みたい日本語 6
――人生を祝祭にする言葉

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齋藤孝 著

四六判/並製/二二四ページ/定価一四七〇円/2010年6月

ベストセラー本の続編。今回は元気になる言葉を集めてみた。
日本語の魅力を再発見する試み

 『声に出して読みたい日本語6』は2001年に第1巻が刊行され、大ベストセラーとなった同書の第6巻目の本です。1巻目は100万部を越えるヒットとなり、同種の本が相次いで刊行され、ある種の「日本語本ブーム」が生まれるきっかけとなりました。
 本書は明治大学文学部教授で教育論を教える齋藤孝氏が「日本語の名文を繰り返し暗誦、朗誦する」ことが心や身体によく、教育効果が高いという年来の主張から生まれました。暗誦・朗誦のための教科書、テキストとして編まれた本です。昔は寺子屋で論語の素読をして読み書きを教えたものですが、現在の教育では黙読が主で、大声を出して朗誦することが忘れられているという批判から生まれた本なのです。実はこの本はそうした教育的狙いを持つと同時に多くの成人の読者にも受け入れられました。ここに集められている古今の名文、名句、芝居のセリフ、詩、俳句、漢詩などがとても魅力があり、繰り返し読んで飽きず、楽しいからです。この本を読んであらためて日本語の美しさ、面白さに触れたという人も多く、朗読の会のテキストや健康のための素読に使っている人もいます。

「ええじゃないか」から「ソーラン節」へ
 第6巻は「ええじゃないか」から始まり、終わりのほうでは「ソーラン節」が取り上げられています。「ええじゃないか」はご存知のとおり幕末の政情不安の中で庶民のあいだに自然発生的に流行った踊りで、「ええじゃないか、ええじゃないか」と皆で歌いながら無礼講で町を練り歩くものです。「ソーラン節」は北海道の漁師の間に生まれた民謡ですが、いまでは「ロック・ソーラン節」となって子どもたちがこれにあわせて歌ったりしています。
いずれも言葉そのものにはさほど意味はないのですがそれを唱えていると、妙に明るく元気になるという点で共通点があります。本書第⑥巻は「人生を祝祭にする言葉」というサブタイトルがつけられています。「ええじゃないか」「ソーラン節」などの無闇と明るく元気になる言葉、日常を非日常にする言葉(冠婚葬祭の言葉、雨乞いや厄払い)、逆境を跳ね返す言葉(正岡子規の「病床六尺」、インビクタスの詩)、季節を感じる言葉(ひなまつり、春よ来い)など、日本人は古来より、人生のいろいろな局面で、言葉による「祝祭化」を行ってきたきたという観点から多くの言葉を選んでいます。ぜひ読者の方々はこれを読んで元気を出し、日本語の豊かさに触れていただきたい。

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