« 2010年7月 | トップページ | 2010年9月 »

2010年8月

2010年8月23日 (月)

おすもうさん

1774

1774_2











高橋秀実著
四六判/上製/256頁/定価1575円(税込)/2010年8月

何かとお騒がせの大相撲ですが、そもそも「相撲」って何ですか?
「スポーツ」ではなく、レスリングやボクシングなどの「格闘技」とも微妙に違う。古式に則って「丁髷」を結い、神聖なる「土俵」の上で「相手に合わせて」立ち合うという不思議な闘い。神々の時代にさかのぼる伝統としきたりを守りつづける「神事」にして「国技」――と言われていますが、本当のところはどうなのでしょう?
 現役の力士や親方たちの話に耳をかたむけ、実際にまわしを締めて土俵に上がってみた著者は、新弟子にまじって相撲講習を受け、ちゃんこも一緒に食べてみました。戦前から大正、明治の記録・報道をしらべ、古事記・日本書紀の記述までさかのぼって相撲の歴史もおいかける、本書は異色のノンフィクション作品です。
 そこから見えてきたのは、近代スポーツや世界各地の格闘技などとはまったく異なる、不思議に「ゆるやか」で「のんき」な相撲の世界だったのです。
気はやさしくて力持ち、神聖にしてノンキな男たちの不思議な世界。
 たとえば、相撲はもともと「国技」ではなかったそうです。「国技館」という建物の名前が先に決まり、「国技館でやるから国技」と言われるようになったというのです。ちなみに、国技館命名の責任者は板垣退助。その板垣も開館後に「国技館なんて云いにくいむずかしい名をつけたのは誠に拙者の不行き届きで…」と後悔していました。こうした、おかしみさえ感じる「ゆるやか」な世界で、力士たちは稽古しぶつかりあい、常人ならざる大食の日々を暮らしているのです。
 気はやさしくて力持ち。異形の巨漢たちのこの世界は、いろんなものをゆるやかに受けとめているようです。それはまた、「日本」という文化そのものの姿であるのかもしれません。その意味でも相撲は「伝統」の「国技」と呼べるのでしょう。
「相撲」はたしかに「日本」を体現している世界かもしれません。
『からくり民主主義』で話題となった高橋秀実さんの最新刊。「相撲とは何か」というテーマと並行して「日本とは何か」という問題も見えてくる好著です。

日本統治時代を肯定的に理解する
韓国の一知識人の回想

1775

1775_2










朴贊雄(パク・チャンウン)

四六判上製/三〇四(口絵八)頁/定価二三一〇円/二〇一〇年八月

「菅談話」の歴史認識の不公正さを浮き彫りにする「統治時代」体験者のメモワール。

●韓国史の中の穏やかな時代
 日韓合併から百年ということで発表された、いわゆる「菅談話」をめぐっては、その内容が一面的すぎるとの批判があがっています。日本統治時代については近年、ハーバード大学のカーター・エッカート教授の『日本帝国の申し子』(Offspring of Empire邦訳小社刊)などの研究によって、冷静な評価を下せる素地ができつつありましたが、「菅談話」にはこうした最新の研究成果はいっさい反映されていないようです。
 本書は、二十歳で終戦を迎えるまでの二十年間、日本統治時代を体験した著者がこの時代を振り返り、驚くほど巧みな日本語で綴った回想記です。近代的な都市へと変貌し始めた京城(現ソウル)の街。チリンチリンと警鐘を鳴らして走る路面電車。子供にまで敬語を使って応対した日本人の歯医者さん。朝鮮人生徒を熱心に教えた日本人教師たち(「恩師、朝岡寛一郎先生との往復書簡」「誠心誠意の人、岩村俊雄校長」)。口絵の写真には伝統的な朝鮮服を着た著者の祖母や叔母たちが静かに頬笑んで写っています。家族旅行やクラス写真、修学旅行の写真も貴重です。これらの回顧と写真から醸し出されるのは、「菅談話」の骨子にある「国と文化を奪われ、民族の誇りを深く傷付けられた」という表現とはほど遠い、おっとりとした雰囲気です。著者は韓国が遭遇したそれまでの国難や、独立後に北朝鮮が起こした朝鮮戦争の悲劇と比べ、日本統治時代ほど穏やかで、前途に希望が持てた時代があっただろうかと問うていますが、それがまさに当時を生きた人の実感なのでしょう。

●創氏改名、独立運動の実際
 第Ⅱ部では、創氏改名や志願兵制度、独立運動など、この時代に関連して頻繁に取り上げられる問題の実際がどのようなものだったかが語られています。すなわち、大多数の人が特別な抵抗もなく創氏改名に応じ、応じなくとも不利益はこうむらなかった。志願兵制度には応募者が殺到した。子供に「独立運動をせよ」などと言う親は皆無だった――。これも「菅談話」の骨子にある「植民地支配が(朝鮮に)もたらした多大の損害と苦痛」とは正反対の現実です。著者は、右の問題について日本を断罪するような見方は戦後韓国の反日教育がつくりだしたものと言い、日本統治時代は「朝鮮の文明開化に貢献した」と総括しています。韓国では日本統治について少しでも肯定的に語ると大変な圧力がかかると言われます。そうしたなかで本書を執筆した著者の勇気と覚悟は並々ならぬものがあったと推察されます。それでもなお書き遺さねばらないと考えたのは、体験者が正確な歴史を伝えることが真の日韓親善に繋がるとの強い信念があったからでしょう。
 政治的な思惑を排して、近代における日韓関係史を公正に見るうえで必読の書です。

成功する人だけが知っている「一万円」の使い方

1773

1773_2








向谷匡史・著

四六判並製/216頁/定価1260円/2010年8月

●知らないと大損! ちょっとしたお金で大きな成果を得る方法●
 いまの日本を覆っている閉塞感の根っこには、「お金が足りない!」という切実な問題があります。人口構成からみても世界経済の状況からみても、右肩上がりだった頃の発想では生き残れません。私たちは今後、「どう稼ぐか」以上に、「どう使うか」に気をつけて暮らしていくべきなのです。
「使い方しだいで1万円は5万円にも10万円にも化ける」と著者は断言します。良くも悪くも、お金の使い方には人間性が出てしまうもの。本書では具体的なエピソードとともに、少しのお金で相手を感激させたり、相手に「見どころがある」と思わせたりすることが可能なのだということを解説していきます。「お金を有効に使う技術」は成功へのパスポートであるだけでなく、生き残りのための命綱ともいえます。本書で紹介されているさまざまな「技術」が、一人でも多くの読者のお役に立つことを願ってやみません。
 
  [1万円の使い方例]
●筆記具、手帳、カバンなど仕事相手の目に触れるものに使う。会話の糸口になり、仕事に対する姿勢もアピールできる。
●喫茶店で人とお茶を飲んだら、「お金を細かくしておきたいから……」と言って1万札で払う。自然に貸しを作ることができる(余裕のアピールにもなる)。
●部下には特上のウナギを奢ること。目下に奢るときにケチってはいけない。
●1万円分のポストカードと切手を買って知り合いにどんどん送れば、メールで用をすます時代だからこそ効果が大きい。思わぬ縁を得られることがある。

2010年8月20日 (金)

思い出に残る子どもの写真を撮る方法

1772_2







 高濱正伸(花まる学習会代表)著

A5判変形[左右182mm×天地210mm]/並製/96頁/定価1,680円/2010年8月

◆「子どものプロ」によるコミュニケーション中心の写真術
 カメラを買う目的として、最も多いものの一つが「子どもを撮りたいから」というものでしょう。しかし、意外なことに、本屋さんのカメラ技法書コーナーに行っても、子どもを撮る方法について書かれた本はほとんどありません。いくつかあっても、カメラの機能活用や、撮影後のデータ加工に関する話が中心で、どうやって子どもの笑顔を引き出せばいいか、というようなことは書かれていません。
 本書は、「カメラのプロ」ではなく、「子どものプロ」が書いた子どもの写真撮影術の本。著者は、学習教室と野外体験教室で合計数万人の子どもたちを見てきた、高濱正伸さんです。学習教室「花まる学習会」を主宰し、『算数脳パズルなぞぺー』シリーズなどのほか、子育てや教育法に関する著書のある「子どもとのコミュニケーションの達人」が子どもの撮影術を伝授します。

◆「ほら! ちゃんとカメラの方を向いて!」なんて言ってませんか?

 本書は、100点以上の作例を紹介していますが、それを見るときっと驚くことでしょう。子どもたちのすばらしい笑顔や真剣なまなざし、思わず笑みがこぼれるかわいらしい仕草がどのページにも写っています。どれもカメラのプロではない高濱さんが撮影したもの。どうやったらこんなふうに撮れるのかと思わされる写真ばかりです。
 その秘訣は、コミュニケーションにあると高濱さんは言います。子どもの写真を撮るとき「にっこり笑って!」などと声をかけて写真を撮っていないでしょうか? 大人相手に写真を撮るときでも、そんなふうに声をかけたら自然な笑顔にはなりません。
 子どもはおもしろいこと、うれしいことがあれば、笑ってくれるはずです。高濱さんは、本書で笑顔にさせる方法をいくつも紹介しています。おどけてみせるとか、ちいさなボケを見せるといったものが基本ですが、子どものいいところを見つけて褒める、撮影者自身がテンションを上げて盛り上げる、子どもに大きな声を出したり体を動かすように働きかける、というものもあります。最初はうまくできなくても、そういう発想を持ってカメラを構えるだけで、ずっといい写真が撮れるようになるはず。効果が絶大であることは、本書にある作例が証明しています。
 このほかにも、光の向きや背景にかんする撮影の基本、真剣な表情を撮る方法や、視線を使った演出法なども伝授しています。いずれもコンパクトデジカメで気軽に撮ることを前提としており、むずかしい技術論は一切なし。全編、子どもの魅力を引き出したり発見したりすることについて書かれています。秋の行楽シーズンに向け、子どもとの思い出をつくり、それをカメラに残すために、是非おすすめしたい一冊です。

« 2010年7月 | トップページ | 2010年9月 »