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2010年8月23日 (月)

おすもうさん

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高橋秀実著
四六判/上製/256頁/定価1575円(税込)/2010年8月

何かとお騒がせの大相撲ですが、そもそも「相撲」って何ですか?
「スポーツ」ではなく、レスリングやボクシングなどの「格闘技」とも微妙に違う。古式に則って「丁髷」を結い、神聖なる「土俵」の上で「相手に合わせて」立ち合うという不思議な闘い。神々の時代にさかのぼる伝統としきたりを守りつづける「神事」にして「国技」――と言われていますが、本当のところはどうなのでしょう?
 現役の力士や親方たちの話に耳をかたむけ、実際にまわしを締めて土俵に上がってみた著者は、新弟子にまじって相撲講習を受け、ちゃんこも一緒に食べてみました。戦前から大正、明治の記録・報道をしらべ、古事記・日本書紀の記述までさかのぼって相撲の歴史もおいかける、本書は異色のノンフィクション作品です。
 そこから見えてきたのは、近代スポーツや世界各地の格闘技などとはまったく異なる、不思議に「ゆるやか」で「のんき」な相撲の世界だったのです。
気はやさしくて力持ち、神聖にしてノンキな男たちの不思議な世界。
 たとえば、相撲はもともと「国技」ではなかったそうです。「国技館」という建物の名前が先に決まり、「国技館でやるから国技」と言われるようになったというのです。ちなみに、国技館命名の責任者は板垣退助。その板垣も開館後に「国技館なんて云いにくいむずかしい名をつけたのは誠に拙者の不行き届きで…」と後悔していました。こうした、おかしみさえ感じる「ゆるやか」な世界で、力士たちは稽古しぶつかりあい、常人ならざる大食の日々を暮らしているのです。
 気はやさしくて力持ち。異形の巨漢たちのこの世界は、いろんなものをゆるやかに受けとめているようです。それはまた、「日本」という文化そのものの姿であるのかもしれません。その意味でも相撲は「伝統」の「国技」と呼べるのでしょう。
「相撲」はたしかに「日本」を体現している世界かもしれません。
『からくり民主主義』で話題となった高橋秀実さんの最新刊。「相撲とは何か」というテーマと並行して「日本とは何か」という問題も見えてくる好著です。

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