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2010年8月23日 (月)

日本統治時代を肯定的に理解する
韓国の一知識人の回想

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朴贊雄(パク・チャンウン)

四六判上製/三〇四(口絵八)頁/定価二三一〇円/二〇一〇年八月

「菅談話」の歴史認識の不公正さを浮き彫りにする「統治時代」体験者のメモワール。

●韓国史の中の穏やかな時代
 日韓合併から百年ということで発表された、いわゆる「菅談話」をめぐっては、その内容が一面的すぎるとの批判があがっています。日本統治時代については近年、ハーバード大学のカーター・エッカート教授の『日本帝国の申し子』(Offspring of Empire邦訳小社刊)などの研究によって、冷静な評価を下せる素地ができつつありましたが、「菅談話」にはこうした最新の研究成果はいっさい反映されていないようです。
 本書は、二十歳で終戦を迎えるまでの二十年間、日本統治時代を体験した著者がこの時代を振り返り、驚くほど巧みな日本語で綴った回想記です。近代的な都市へと変貌し始めた京城(現ソウル)の街。チリンチリンと警鐘を鳴らして走る路面電車。子供にまで敬語を使って応対した日本人の歯医者さん。朝鮮人生徒を熱心に教えた日本人教師たち(「恩師、朝岡寛一郎先生との往復書簡」「誠心誠意の人、岩村俊雄校長」)。口絵の写真には伝統的な朝鮮服を着た著者の祖母や叔母たちが静かに頬笑んで写っています。家族旅行やクラス写真、修学旅行の写真も貴重です。これらの回顧と写真から醸し出されるのは、「菅談話」の骨子にある「国と文化を奪われ、民族の誇りを深く傷付けられた」という表現とはほど遠い、おっとりとした雰囲気です。著者は韓国が遭遇したそれまでの国難や、独立後に北朝鮮が起こした朝鮮戦争の悲劇と比べ、日本統治時代ほど穏やかで、前途に希望が持てた時代があっただろうかと問うていますが、それがまさに当時を生きた人の実感なのでしょう。

●創氏改名、独立運動の実際
 第Ⅱ部では、創氏改名や志願兵制度、独立運動など、この時代に関連して頻繁に取り上げられる問題の実際がどのようなものだったかが語られています。すなわち、大多数の人が特別な抵抗もなく創氏改名に応じ、応じなくとも不利益はこうむらなかった。志願兵制度には応募者が殺到した。子供に「独立運動をせよ」などと言う親は皆無だった――。これも「菅談話」の骨子にある「植民地支配が(朝鮮に)もたらした多大の損害と苦痛」とは正反対の現実です。著者は、右の問題について日本を断罪するような見方は戦後韓国の反日教育がつくりだしたものと言い、日本統治時代は「朝鮮の文明開化に貢献した」と総括しています。韓国では日本統治について少しでも肯定的に語ると大変な圧力がかかると言われます。そうしたなかで本書を執筆した著者の勇気と覚悟は並々ならぬものがあったと推察されます。それでもなお書き遺さねばらないと考えたのは、体験者が正確な歴史を伝えることが真の日韓親善に繋がるとの強い信念があったからでしょう。
 政治的な思惑を排して、近代における日韓関係史を公正に見るうえで必読の書です。

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