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2010年9月21日 (火)

藩と県
――日本各地の意外なつながり

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赤岩州五(あかいわ・しゅうご)・北吉洋一(きたよし・よういち)著

四六判/並製/二二四ページ/定価一四七〇円/2010年9月21日

四十七都道府県別に遠隔地との交流、影響を多彩なエピソードで解き明かす

●藩を見ないと今の県は分からない

 山形県庄内地方になぜ西郷隆盛を祀る南洲神社があるのか。戊辰戦争で庄内藩と薩摩藩は敵味方で戦った相手なのに。庄内の鶴岡で食べる「笹巻き」という餅菓子は鹿児島の「あくまき」という菓子に似ているのも意外だ。実は鶴岡と鹿児島は維新後の西郷の温情からはじまり深い交流が今でも続いている。こうした遠方の各地に交流や相互影響があることを食べ物、名産、人、歴史秘話などを通じて解き明かしたのが本書である。
 日本という国の成り立ちを考えると江戸時代に二七〇ほどあった「藩」の存在が重要である。各藩は競って藩内の教育、殖産を行ない、独自の文化を築きあげた。また大名の転封、移封により遠隔地の名産が移ってきた場合もある(会津若松の「高遠そば」や大和郡山の「金魚」など)。参勤交代や庶民の伊勢参り、金比羅詣り、北前船や薬売りなど、移動や交通の道筋に沿ってさまざまな影響が生じた。明治維新後の廃藩置県をへて、紆余曲折ののち現在の四七都道府県に定まったのだが、本書ではその経過も解説しつつ、この四七が決して絶対的に根拠のあるものではないことを示しているのも面白い。

●地方活性化の一助にも
 加賀藩が氷室に蓄えていた氷を毎年、江戸の将軍に献上するために使ったルートはどれだったろうと推理する「道」のコラムは興味津々である。参勤交代の通常ルートでは溶けてしまうから、秘密裡に松本藩の許可のもとに北アルプスを通るルートにしたにちがいないと著者は述べる。福井県敦賀市は水戸天狗党が最後に捕らえられた場所で三五二人が斬首された。今、水戸と敦賀は姉妹都市で小学生の交流がある。仙台の「すずめ踊り」という祭りは堺の石工が仙台城の築城のときに伝えたもので堺市では「堺すずめ踊り」を復活させた。著者の二人は地理や地誌、食や名物、旅行などについての編集者でありライターである。長年の取材体験や知識、資料をもとに各地の特産品をめぐるエピソードやその地方独特の気風、文化が面白く語られている。
 昨今、不況や停滞により地方の活性化や新たな道州制の導入などが取りざたされているが、本書を読むと、日本の国土はもっと豊かで刺激的な可能性に満ちていることに気づかされるのではないか。

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