« 2010年9月 | トップページ | 2010年11月 »

2010年10月

2010年10月19日 (火)

殴る女たち
―― 女子格闘家という生き方

1784

1784_









佐々木亜希・著

46判並製/264頁/定価1575円/2010年10月

◇殴る、蹴る、関節をきめる――過酷なリングを選んだ女たちの生を活写◇

 これまで男のスポーツと考えられてきたスポーツにチャレンジする女性が増えています。しかし格闘技に生きる女性は現在でも珍しく、彼女たちにはつねに「なぜ格闘技を?」という問いがついてまわります。この疑問に「殴る」という行為を切り口に答えたのがこの本です。アマレスや柔道、空手などのバックボーンをもって女子格闘技のリングに上がった選手から、元SM嬢、引きこもりまで、さまざまな経験を経て「殴る女」になった女性たちの肉声は、いずれもただならぬ迫力に満ちています。著者は選手たちの生々しい言葉をちりばめながら、戦う女たちの喜びと哀しみを浮き彫りにしていきます。
 おもに数百人規模の会場で開催される女子格闘技の試合には、つねに名状しがたい熱気が溢れています。観る者を鼓舞してやまないその熱気を、本書でぜひ体感していただきたいと思います。

[選手の言葉より]
◇「なんで殴るのが好きかと訊かれても、好きだからとしか言えないんですよ。それじゃ普通の人は好きじゃないんですか、って逆に訊きたい」(辻結花)
◇「殴るのが怖いっていう感覚はいまだに消えないですね。拳を使って殴っている感覚ってほんと、ずっと忘れないんで」(藤井惠)
◇「普通に、真ん中あたりで生きていきたいんです。ずっと生きることがしんどくて、嫌なことから逃げて楽な道ばっかり選んできた。そういう自分を変えたくて格闘技をやっているんです」(石岡沙織)
◇「もっとカッコいい私がいるはずだって思うから、もっと強くなって、たくさんの人にそれを見せて、これが私なんですって言いたいんです」(渡辺久江)

2010年10月12日 (火)

日経新聞を「正しく」読んで 最新経済に強くなる
――〔日経電子版対応〕

1782

1782_








東谷暁 著

新書変型判/並製/272ページ/定価1260円


円高って何だ、日本は本当に格差社会か、財政破綻は真近か、今すぐ役立つ経済入門。

●気鋭の経済ジャーナリストが書き下ろした経済常識の裏の裏
 不況に沈む日本経済ですが、その特効薬はなかなか見つかりません。本書は経済を学びたいと思っている学生、若者から、どこに日本経済の問題があるのかに日夜頭を悩ましているビジネスマンまで、分かりやすく問題の本質を衝いた経済入門書です。
 本書の著者はこれまで『日本経済新聞は信用できるか』(筑摩文庫)、『金融庁が中小企業をつぶす』(草思社)、『エコノミストを格付けする』(文春新書)などで主に経済畑のジャーナリストとして日本経済界の問題を追及してきました。日本の経済学者のいい加減さ、経済政策の定見のなさ、経済メディアの誤誘導などを厳しく指摘してきた著者ですが、今回の本は、もっと広く多くの読者に向けて、いま話題の問題点を挙げつつ、どうしたら正しい経済知識を身につけられるか、そしてこれからの予測にどう役立てることができるかを率直に綴った本です。参考書的な通り一遍の経済入門ではなく、裏の裏まで読み込んだ本音の入門書といって過言ではありません。

●『日本経済新聞』は格好の導き手であり、これをどう読むかがポイント
 本書のタイトルの『日経新聞を「正しく」読んで……』という部分に奇異な感じを抱いたかもしれません。著者はかつて先にも挙げた『日本経済新聞は信用できるか』(PHP、のち筑摩文庫)という本を書いて物議を呼びました。これはタイトル通り日本一の経済クオリティーペイパーを自負する日経のいい加減さを槍玉に挙げたものです。しかし、著者は日経をある一定限度は評価し、十分利用しなさいと、本書では言っているのです。この本は日経をベースにした正しい経済情報の取り方を経験的に教えてくれる点で今日、稀有の書です。特に今、焦眉の経済問題を俎上に挙げながら 、具体的にさまざまな観点を説明してくれています。これは格好の入門書であり、ニュースを読み解く解説書ともいえるでしょう。現下、必要とされる好著です。

俳句名人になりきり100の発想法

1783

1783_











ひらのこぼ 著

四六判/並製/232ページ/定価1470円

類書にない面白さと好評の俳句入門書、最新刊!

●好評の「俳句発想法」シリーズの第4弾
 ひらのこぼ氏による本書は既刊の『俳句がうまくなる100の発想法』『俳句がどんどん湧いてくる100の発想法』『俳句発想法 100の季語』につづく第4作目となるものです。本シリーズは、従来の俳句入門書にありがちな「見たままを虚心で」といった分かりにくさを排し、こうすれば簡単に秀句が作れるという「超実用性」に徹したところが特徴で、この点が多くの読者から支持されている秘密です。昨今の俳句ブームもあって多くの読者(とくに中高年世代)から「とても役に立つ」「類書にないヒントがある」といった投書が多く寄せられています。
 今回は、これまでの「着眼点」「季語」といったテーマから「名人の発想をそのまま借りる」という方法論で本が作られています。

●芭蕉風なら「旅のこころで」、久女なら「女のナルシシズムで」
 俳句作りは、何も難しいことではないのです。日本には過去にたくさんの俳句名人が存在し、無数の秀句が残されています。このうち一人からでも「発想」「方法論」を学んで、それをそのまま使ってしまうことが肝心です。そうすることで名人の発想が自家薬籠中のものになるのです。松尾芭蕉なら「旅のこころで」となります。「野ざらしを心に風のしむ身かな」という「野ざらし紀行」の発句に見るまでもなく、「奥の細道」などで、旅の句の名人と呼んでもよい芭蕉に学ぶなら、この一点かもしれません。
 杉田久女という気の強い女流俳人がいます。「張りとほす女の意地や藍ゆかた」「花見にも行かずもの憂き結び髪」「たてとほす男嫌いの単帯」など女のナルシシズムを格調高く詠んで有名です。彼女の真似をして一句詠んでみるのもいいかもしれません。
 本書はいまや「俳句発想法」シリーズとして多くの読者に支持されて、中高年のあいだに広がる俳句ブームを大いに盛り上げています。ご一読、俳句趣味の方に贈ってください。

JAL再建の行方
―― 復活か、ふたたび破綻か

1781jal

1781jal_











杉浦一機著/四六判並製/256頁/定価1575円(税込)

◎激変する世界の航空界の現状をふまえ、「JAL問題」の核心をあぶりだす
 「親方日の丸」に寄りかかる社風、高コスト体質、甘すぎる財務の見通し、責任転嫁…日本航空(JAL)は、自らの悪弊を長年見すごし続けた末、2010年1月19日に破綻した。負債総額2兆3221億円にものぼる、事業会社としては戦後最大規模の倒産である。
 だが、JAL倒産を招いた要因は、JAL内部の腐敗だけではない。長年赤字路線を押しつけ、世界に類を見ない高額な「公租公課」(空港使用料、航空機燃料税など)を課してきた国交省や、航空・運輸利権に付け込み暗躍してきた族議員たち、JALの粉飾会計の片棒を担いできた監査法人などの存在も、忘れてはならない。
 航空アナリストである著者の杉浦氏は、上記のような様々な角度から「JAL倒産の真相」をわかりやすく分析。また、「海外の破綻エアライン」の再建への苦難の道のりや、シェア争いが激化する「アライアンス(国際航空連合)」の現状、台頭するLCC(ローコストキャリア)の動向にも紙幅を割き、JALが立たされた苦境を浮き彫りにしていく。

◎あの更生計画案で、本当に再建などできるのか?
 2010年8月31日、JAL再建のための更生計画案が東京地裁に提出され、裁判所からの認可(11月30日の見込み)が下りれば正式に更生作業が始まる。だが今回の更生は、期限の2013年1月まであと2年余りしかない。更生のために用意された公的資金は9000億円にも達するが、企業再生支援機構の更生作業が失敗すればJALは「二次破綻」し、回収できない債権のツケは国民に回される。スムーズに再建できれば国民の負担額は数百億円ですむが、失敗すれば1兆円近い負担が生じるのである。
 実際、今回の更生計画案は、信憑性を欠く点が多々あると著者の杉浦氏は言う。例えば支援機構は、2011年度の国際線46路線中、20路線の搭乗率を85%と見込んでいるというが、年間で85%とは、商閑期を除いて90%~満席を維持しなければ成り立たない数字だ。また、JALの経営陣や支援機構から伝わってくる情報は、リストラ、路線の休止、機材のダウンサイジング、社員の待遇改善といった部分的なことばかりで、「新生JAL」の全体像が見えてこない。JALの存在感は薄れるばかりである。
 杉浦氏は本書のまとめに、JAL復活への提言として「グループ共通ロゴは廃止せよ」「和の魅力で特徴を出せ」「乗客を仕分けするな」等のユニークかつ鋭い施策を掲げている。非常に現実的な再建のための提言であり、ここが、たんにJAL批判に終始している類書との最大の相違点だろう。航空・運輸関係者はもちろん、JAL問題に関心をもつすべての方に読んでいただきたい本である。

2010年10月 5日 (火)

デヴィ・スカルノ回想記
――栄光、無念、悔恨

1754

1754_











ラトナ サリ デヴィ・スカルノ著

四六判/上製(ハードカバー)/372ページ/定価2,100円(税込)

 日本人でただ一人、外国の国家元首の妻となった女性、デヴィ夫人。
 おどろくほど率直に綴られた、その華麗かつ波瀾に富んだ人生のすべて。

○類まれな表現力で半生を綴る
 1959年、インドネシアのスカルノ大統領に見染められてかの地に渡り、日本人女性として唯一人、外国の国家元首夫人となったデヴィ夫人はいま、これまでに築いた幅広い人脈のもと、国際社会を舞台に人権擁護活動や慈善活動に多忙な日々を送っている。そのデヴィ夫人が今年古希を迎えるにあたり、あらためて来し方を振り返った回想記を執筆。若き日にフランス文学やロシア文学に傾倒したというデヴィ夫人は、自らのドラマチックな半生と、その間に味わった葛藤を類まれな表現力をもって包み隠さず綴っている。

○聡明で正義感の強い美少女
 日米開戦の前年1940年に、義侠心の厚い大工の娘として東京・麻布で生まれたデヴィ夫人は、美しいだけでなく、聡明な(学業成績はトップクラス)少女だった。正義感が強く、身体の不自由な母、気持ちの優しい弟の面倒を生涯みると決心し、中学を卒業すると難関を突破して千代田生命に入社。十代後半には〝世界の社交場〟と称された赤坂のナイトクラブ「コパカバーナ」でアルバイトをし、女優やモデルの仕事をして母や弟の生活費を得るかたわら、持ち前の向上心から日本舞踊を習い英語を勉強する。一方で結婚への憧れがあり、ディレンマを抱えていた1959年、対インドネシア貿易商社社長の「演出」でスカルノ大統領と「見合い」をすることとなり、思いがけず大統領夫人の道を歩むことになる。夫人はこのとき19歳だった。

 ○幾多の悲劇をのりこえる
 その後あいついで起きた母の死と弟の自死。スカルノからスハルトへの権限移譲に繋がった(いまだ謎の多い)「9・30事件」とその後の動乱。幼い娘を連れてのパリでの亡命生活。スカルノ大統領の失意のうちの死。スハルト一族との係争。大統領夫人となって以来のデヴィ夫人は幾多の悲劇や困難に遭遇し、そのつど自身の才覚一つを恃みとしてこれをのりこえてきた。しかも口絵写真に見るように、華やかであり続け、快活さを失わなかった。その強靭な精神力にまずは圧倒される。

○スカルノ大統領との〝同志愛〟
 当初、デヴィ夫人にはインドネシアに関する知識は殆どなかった。しかし、真の自立した国家づくりをめざすスカルノ大統領の無私の姿に共鳴し、以後、陰に陽に大統領を支える。西イリアン奪還闘争やマレーシア連邦粉砕闘争を、はらはらしながらも〝同志〟として見守り、インドネシアを訪れた池田勇人をはじめとする日本の政財界人を接待し、大統領の外遊にも同行した。インドネシア初の救急病院建設のために奔走し、大統領に仇なす日本人ビジネスマンを排除するために児玉誉士夫、大野伴睦、河野一郎に直談判したこともある。9・30事件では危険をかえりみず軍と大統領のあいだを取り持った。そんなデヴィ夫人は事件後、いちはやくスカルノを見限った日本政府、駐インドネシア齋藤大使、時の佐藤栄作首相への怒りを隠さない。大統領の死去後は、その遺産を〝私物化〟するスハルト一族とも戦う。
 大統領とデヴィ夫人は深い愛情で結ばれていたが、それはある意味で〝同志愛〟と呼ぶのがふさわしいかもしれない。インドネシアの若手研究者はデヴィ夫人を「大統領の政治的見解にも大きな影響を与える女性」と評している。大統領亡きあと、デヴィ夫人はいくつかの恋を経験し、その顛末もここに綴られているが、夫人のなかにはスカルノ大統領の志が変わることなく脈々と受け継がれている。

○戦後アジア史の貴重な証言
 折しもデヴィ夫人がインドネシアに嫁したのはアジア激動の時代であり、この回想記では、波瀾にみちた夫人の半生に重ねて戦後アジア史の一端を見ることもできる。さらに、現在に繋がる、インドネシアと日本、アメリカ、中国、あるいは〝第三世界〟の各国や北朝鮮との関係を知る上での貴重な資料ともなっている。

« 2010年9月 | トップページ | 2010年11月 »