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2010年10月12日 (火)

JAL再建の行方
―― 復活か、ふたたび破綻か

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杉浦一機著/四六判並製/256頁/定価1575円(税込)

◎激変する世界の航空界の現状をふまえ、「JAL問題」の核心をあぶりだす
 「親方日の丸」に寄りかかる社風、高コスト体質、甘すぎる財務の見通し、責任転嫁…日本航空(JAL)は、自らの悪弊を長年見すごし続けた末、2010年1月19日に破綻した。負債総額2兆3221億円にものぼる、事業会社としては戦後最大規模の倒産である。
 だが、JAL倒産を招いた要因は、JAL内部の腐敗だけではない。長年赤字路線を押しつけ、世界に類を見ない高額な「公租公課」(空港使用料、航空機燃料税など)を課してきた国交省や、航空・運輸利権に付け込み暗躍してきた族議員たち、JALの粉飾会計の片棒を担いできた監査法人などの存在も、忘れてはならない。
 航空アナリストである著者の杉浦氏は、上記のような様々な角度から「JAL倒産の真相」をわかりやすく分析。また、「海外の破綻エアライン」の再建への苦難の道のりや、シェア争いが激化する「アライアンス(国際航空連合)」の現状、台頭するLCC(ローコストキャリア)の動向にも紙幅を割き、JALが立たされた苦境を浮き彫りにしていく。

◎あの更生計画案で、本当に再建などできるのか?
 2010年8月31日、JAL再建のための更生計画案が東京地裁に提出され、裁判所からの認可(11月30日の見込み)が下りれば正式に更生作業が始まる。だが今回の更生は、期限の2013年1月まであと2年余りしかない。更生のために用意された公的資金は9000億円にも達するが、企業再生支援機構の更生作業が失敗すればJALは「二次破綻」し、回収できない債権のツケは国民に回される。スムーズに再建できれば国民の負担額は数百億円ですむが、失敗すれば1兆円近い負担が生じるのである。
 実際、今回の更生計画案は、信憑性を欠く点が多々あると著者の杉浦氏は言う。例えば支援機構は、2011年度の国際線46路線中、20路線の搭乗率を85%と見込んでいるというが、年間で85%とは、商閑期を除いて90%~満席を維持しなければ成り立たない数字だ。また、JALの経営陣や支援機構から伝わってくる情報は、リストラ、路線の休止、機材のダウンサイジング、社員の待遇改善といった部分的なことばかりで、「新生JAL」の全体像が見えてこない。JALの存在感は薄れるばかりである。
 杉浦氏は本書のまとめに、JAL復活への提言として「グループ共通ロゴは廃止せよ」「和の魅力で特徴を出せ」「乗客を仕分けするな」等のユニークかつ鋭い施策を掲げている。非常に現実的な再建のための提言であり、ここが、たんにJAL批判に終始している類書との最大の相違点だろう。航空・運輸関係者はもちろん、JAL問題に関心をもつすべての方に読んでいただきたい本である。

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