« フェリカの真実
――ソニーが技術開発に成功し、ビジネスで失敗した理由
| トップページ | 北朝鮮に嫁いで四十年
――ある脱北日本人妻の手記 »

2010年11月22日 (月)

絵で見る 明治の東京

1787_2

1787_3











穂積和夫 絵と文

A5判上製/240頁/定価2100円/2010年11月

建築イラストの第一人者が160枚の絵で描いた明治の街や建築物や風俗。

●『坂の上の雲』などで明治への関心は高まる
 NHKの『坂の上の雲』(司馬遼太郎)の放映などがきっかけで今また明治への関心は高まっているようです。異国からの侵略を防ぎ、近代国家になるべく、がむしゃらに文明開化を行った明治の東京は活気にあふれた、和洋が混在する不可思議な空間でした。さまざまな小説、歴史書で描かれている明治ですが、ここにまた新たな手法でその時代を再現した新鮮な一書が書かれたといっていいでしょう。
 穂積和夫氏はベテランのイラストレーターですが、とくに小社刊『日本人はどのように建造物をつくってきたか』(全10巻)などにみられるように、建築物のイラストでは第一人者といっても過言ではない存在です。本書には築地ホテル館、鹿鳴館、浅草凌雲閣(十二階)、新橋ステーション、三菱一号館をはじめ明治の主要建築物のほとんどが描かれています。現存していないものは、当時の写真や絵葉書、錦絵などの資料だけでなく、たとえば建築家ジョサイア・コンドル(帝室博物館、鹿鳴館などの明治を代表する設計者)の残した図面などまでを参考にして、再現する努力をしています。浅草の日本パノラマ館、活動の神田錦輝館、万世橋ステーションなども珍しい絵ですが、98~99ページのエンデ・ベックマンによる幻の東京都市計画図はとくに面白く読まれるかもしれません。現今の東京市街図と比較して、ありえたかもしれない東京を思い描くのも刺激的です。

● 明治の風俗・風物への愛惜
 著者は昭和五年、東京新富町生まれ。すでに「明治は遠くなりにけり」と草田男がうたった時代に生まれてはいますが、いまだ明治の香りの残っていた下町は故郷と感じています。著者は建築イラスト以外にも、ファッションやクルマなどの乗り物も得意ジャンルです。子どもの遊び、明治特有のファッション、女性の髪型、さまざまな馬車の絵、ランプ、時計台、江戸情緒の残る柳橋、浅草橋界隈など、明治の風俗・風物の細やかなスケッチはいつまで見ても飽きない面白さに満ちています。文章は明治全体の通史でありながら、どういう時代であったかを簡潔に全体として、さまざまなエピソードを入れながら面白く描くのに成功しています。絵と文章あいまって、本書は明治の東京を丸ごと再現した稀有な書といっていいでしょう。歴史好き、地誌好きの人に格好の読み物です。

« フェリカの真実
――ソニーが技術開発に成功し、ビジネスで失敗した理由
| トップページ | 北朝鮮に嫁いで四十年
――ある脱北日本人妻の手記 »

書籍・雑誌」カテゴリの記事