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2011年1月31日 (月)

サービスできないドイツ人、主張できない日本人

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川口マーン惠美 著

46判/並製/256頁/定価1,680円/2011年1月

◆日本人がドイツで暮らすと何が起きるか?
 ドイツにいる著者の携帯電話が、買ってまだ一週間ほどしか経っていないのに、故障してウンともスンとも言わなくなった。仕方がないので、テレフォンショップに行ってみてもらうことにした。店には感じの悪い若い店員が一人でいる。そういえば、携帯電話を買ったときも、この店員が露骨にうるさそうにしながら対応していたと思い出す。その店員に壊れた携帯電話を渡すと、彼は電池を取り出し、もう一度入れた。すると、驚いたことに電話は突如、生き返り、ディスプレイに光が灯った。店員は完全にバカにしたように「電池が逆さまだった」と言う。そんなはずはない、確かに電池は確認したし、それに動かなくなったのは電池を確認する前だった、と店員に反論したが、彼はそれをさえぎって「これでだめだったら、また来てください」。
 どうやら、上記のような例は、特殊な店員による特殊な事例では決してないようです。本書には著者のドイツでの体験が数多く紹介されていますが、それを読むと、本当にドイツ人はつくづくサービスに向いていない国民なのだと思わされるものばかり。しかし、著者はこのドイツのサービス不毛ぶりは、実は国際的に見ればむしろ標準的なのではないかと言います。むしろ、日本のサービスのすばらしさを、日本人はもっと自覚した方がいいのではないか、と言うのです。
 
◆ドイツから「素晴らしい日本」が見えてくる
 本書は、ドイツ在住二十八年、国際結婚して三人の娘を育て、これまでに『ドイツからの報告』『ドイツは苦悩する』(いずれも草思社)など数々の著作のある著者による、ドイツと日本の比較文化エッセイです。表題のサービスに関する話題や、自己主張に関する話題だけでなく、教育、食生活、政治、男女関係、エコに対する態度までを幅広く取り上げています。比較文化の本は数々ありますが、本書はあらゆる側面が二十八年間の在独経験をもとに自分の体験として、ディテールたっぷりに語られているのが特徴です。その中で、著者は文化摩擦に傷ついたり、憤ったりしているのですが、それらのエピソードは著者独特の「ぼやき」をともなったユーモアを含んで語られるので、読んでいるほうは思わず笑ってしまいます。
 もう一つの本書の特徴は、ヨーロッパの優等生で国際的にも尊敬される国であるドイツの実情を示しながら、あまりにかけはなれた日本の姿を肯定的にとらえ、もっと評価すべきだと述べている点にあるでしょう。ドイツへ旅行される方など、ドイツに興味のある方はもちろんですが、そうでなくても読めばめっぽう面白く(とくに著者のぼやきぶりが!)、日本のことを考えたくなる一冊です。

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