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日本に亡命した台湾独立運動者の回想1924‐1949 »

2011年3月24日 (木)

北朝鮮抑留記 わが闘争二年二カ月
――1999年12月―2002年2月

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杉嶋 岑(すぎしま・たかし)著

四六判上製 360ページ 定価2415円 2011年3月

元日経記者のスパイ容疑での拘束事件の全貌。

当事者が初めて書いた抑留体験記。


●日本の情報機関の腐敗とマスメディアの裏切りに警鐘

この本は9年前におきた元日本経済新聞記者の北朝鮮での拘束事件を当事者が初めて綴った回想記です。これまで解放直後、短い手記は発表していたものの単行本という形で事件の全貌が語られるのは初めてであり、当時ニュース等で伝えられていた事件の真相が本書において詳細に明らかにされました。驚くべき体験記です。著者は訪朝時の平壌でスパイ容疑をかけられ突然拘束されました。日経を定年退社後のごく個人的な観光旅行の途中であり、五回目の北朝鮮訪問時でした。捕まってみて分かったのですが、過去の訪問時に内閣情報調査室と公安調査庁に写真やビデオなどを提供協力した事実がすっかり北朝鮮側に伝わっていたのです。同僚である日経ソウル支局長からの「彼はKCIAと付き合っていた」という趣旨の誤解に満ちたファックス情報まで北朝鮮の調査官は入手していました。本書で著者は日本の情報機関がいかに堕落し、またマスメディア内にも裏切り者がいることを痛烈に告発しています。本書は、2年2ヶ月の長きにわたって抑留され、いわれなき辛酸をなめた当事者にしか書きえない日本への衷心からの警告の書といえるでしょう。

●豊富なエピソードで綴られる北朝鮮社会の真実

 拘束された著者は自殺未遂までするのですが、当初の厳しい尋問攻めの毎日をへて、平壌市内の監禁場所を移るうちに次第にやや落ち着きを取り戻し、監視員や炊事婦など周囲の人間たちとの交流が始まり、窓から垣間見る街の状況を観察し始めます。そして隠れて小さな紙に短歌を書きつけ日記代わりにします。本書のもうひとつ興味深い点は、この抑留期間中の宿舎やその周辺の観察であり、人間スケッチです。著者はジャーナリスト魂を発揮して、細部を記憶にとどめ、不屈の情熱を持って帰還への日々を耐え抜きます。豊富なエピソードによって北朝鮮社会の真実が描かれ、著者の「わが闘争」の日々が綴られる迫力に満ちた興味津々の書となっています。

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