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2011年5月

2011年5月24日 (火)

中国共産党
――支配者たちの秘密の世界

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リチャード・マグレガー=著 小谷まさ代=訳

四六判上製 四四八頁 定価二四一五円

○権力喪失の恐怖を体験
 一九八九年の天安門事件の武力弾圧から二十年余、事件直後は孤立無援となった中国ですが、いまやGDP世界第二位の経済大国へと変身し、世界金融危機後の国際社会で圧倒的なプレゼンスを示しています。事件後の観測では〝崩壊〟は間近いとすら見られた中国は、なぜソ連、東欧諸国と同様の道をたどらなかったのか。〝崩壊〟どころか、経済の分野では〝中国モデルの一人勝ち〟ともいうべき驚異的な発展を遂げたのはなぜなのか。『フィナンシャル・タイムズ』元北京支局長が書いた本書には、中国に関心を持つ向きなら誰しもが抱く疑問を解くカギが示されています。すなわち、天安門事件で味わった強烈な危機感、権力喪失への恐怖がその後の党の指導の基調になったということです。それゆえ党は事件後、危機を招くあらゆる可能性を排除する一方で、人民を繋ぎとめるためにイデオロギーすら投げ出し、死に物狂いで経済成長を追求してきたのです。著者は、中国内外の多くの関係者に取材し、その恐怖や危機感がどのようなかたちで党の支配に反映しているのかを明らかにしていきます。

○舞台裏に巧みに姿を隠す

 民主活動家の投獄、SARSや汚染食品隠し、中央宣伝部による歴史の隠蔽・捏造等々、言論・情報分野における統制は、党の恐怖をはっきりと映すものですが、これはお馴染みのやり方です。新たな手法は経済、ビジネスの分野に見られます。天安門事件後、社会主義市場経済の道をひた走ると鄧小平が決め、朱鎔基第一副主席が国有企業改革に大ナタをふるったわけですが、その後党は前面に出ることなく巧みにわが身を舞台裏に隠します。たとえば中国の銀行の外国人投資家向けの「目論見書」には党の役割が除外されていますが、党は人事権を握ることによって(党中央組織部が人事を担当)、これら国有大企業を統制しています(第二章、第三章)。温州など儲かる地方の有力企業内に労働組合をつくらせ、これを実質的に支配します(第七章)。トップダウンの独裁+党の存在の隠蔽。欧米に向かって市場原理を説き、国民に向かってマルクス主義を吹聴する変わり身の早さ。これらが天安門事件の教訓に学んだ党の統治手法であることが本書を読むとよくわかります。

○それでも党支配の危うさは続く

 民主化、少数民族問題、腐敗・汚職、貧富の格差、人民解放軍との関係など、党が抱える問題は相変わらずのようです。来年二〇一二年の国家主席の交替後、はたして党は中国をどう舵取りしていくのか。党の支配は今後とも盤石なのか。グローバル化によって一蓮托生の身となった今、中国の動向は日本にとっても重大事です。その核心部分の実態を明らかにした本書は、『エコノミスト』元編集長ビル・エモット氏が本書に寄せた言葉のとおり、「中国で仕事をしている人、中国を理解したい人の必読書」です。この優れた中国共産党レポートは、その『エコノミスト』および『フィナンシャル・タイムズ』の〝ブック・オブ・ザ・イヤ―2010〟に選ばれています。

ロマノフの徒花
――ピョートル二世の妃エカチェリーナ

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河島みどり 著
四六判上製 216頁  定価2200円 2011年5月

◆ロシア史の空白を埋める奇書
  著者は『ピョートル大帝』に続いて本書を上梓しました。帝政時代の資料はソ連時代に一掃され、ソ連から姿を消しました。著者はリヒテル、ギレリスなどの通訳をつとめ、その頃訪れた亡命ロシア人が多く住むパリの古書で資料を集めました。ですからこの本には参考文献として日本語の本は一冊も使われていません。

  ロマノフ王朝は18世紀3人の女帝と一人の皇女が統治しました(この女性がロマノフの徒花)。の本はこの皇女に光を当てます。婚約したピョートル2世は結婚寸前に若くして死去。夫を失ったエカチェリーナは朔北の地シベリアへ追放となります。ここでの生活が実に活き活きと語られています。スターリン時代もかくやと思わせるものがあります。一旦流刑地にたどりつくと、またさらに東方の流刑地に移動させられ、何年か後にエカチェリーナはようやくペテルブルグにたどりつくという苦難の物語です。このとき、シェレメーチェフ家の息女も道道するのですが、この女性が記録を残してくれたのでこの物語が成立しました。   

虚子に学ぶ俳句365日

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『週刊俳句』編

四六判並製 216ページ 定価1575円

高浜虚子の句は俳句の勉強に最適だ!虚子を俎上に若手俳人たちが俳句作法を説く。

●現代的で、面白い虚子の俳句に学べ
 去年今年(こぞことし)貫く棒の如きもの(一月一日)
 桐一葉日当りながら落ちにけり(八月十日)
 流れ行く大根の葉の早さかな(十一月九日)
 遠山に日の当りたる枯野かな(十二月二日)
 高浜虚子はご存知のように近代俳句を拓いた正岡子規に兄事し、早世した子規の意を受け継いで俳誌『ホトトギス』を刊行し、俳界を隆盛に導いた近代最大の俳人。引用した代表作のように平明な中に日常を写生する鋭い視線は、もっとも俳句らしい俳句といって過言ではありません。「花鳥諷詠」「写生句」「台所雑詠」といった彼自身の言葉にも俳句の骨法がよく表現されています。本書はいまでも古びない(というよりかえって現代的な)虚子の句(20万句ともいわれる)の中から一日ごとに365句を選んで解説を付した本です。俳句は日本の自然に即した季節感を歌うものだとすれば、こういう並べ方の中に俳句の作法を読み取ってもらうのは良い練習になります。

●若手俳人たちがつどうウェッブ俳句誌『週刊俳句』
 虚子の俳句はいま若い人に人気があります。一時、月並みで面白くないと言われたこともありましたが、けっしてそうではなく(虚子が俳壇を専横していると見られ不当に毛嫌いされた面もある)俳句の本来の面白さをもった秀句がたくさんあります。この本は『週刊俳句』編となっており、若い選者が新しい観点から虚子の俳句を選んでいます。『週刊俳句』はウェブ上に刊行されている俳句誌で、今までの古臭い俳句誌とは異なり、気軽にウェッブ上で句を発表したり、俳論を戦わせたりする新時代の俳人(30代から40代の俳人、詳しくは巻末参照)がよりつどっていて、最近注目されている人気のウェブマガジンです。こうした若い俳人たちの目により選ばれ解説を付された虚子の句を存分に味わってください。東日本大震災以降、めっきり厭世感に浸っている人に読んでいただきたい。良きにつけ悪しきにつけ日本の自然とともに生きてきた我々の感性や人生観の原点に気づかされるはずです。

2011年5月16日 (月)

雲のカタログ
――空がわかる全種分類図鑑

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村井昭夫・鵜山義晃 著

A4変型判/並製/144頁/定価1,470円/2011年5月


◆100近くある雲の学術的分類をすべて網羅した初めての図鑑!
 雲をちゃんと理解して、その性質を知るためにはどうすればいいでしょうか。それにはまず、雲の名前を知らなければなりません。名前がわからなければ、それぞれにどんな性質があるかを考えることさえできないからです。雲にはもちろん名前がついていますが、「入道雲」「うろこ雲」「ひつじ雲」などという名前は、いわば俗名で、科学的な分類にしたがった名前ではありません。

 雲は、世界気象機関(WMO)によって科学的に分類されています。大きく分けると10種類、さらに細分化して全体で100近くにおよぶ名前がついています。空に浮かぶ雲を見て、100種近い分類に当てはめることは、雲を理解する第一歩のハズですが、じつはこの分類ができるようになるための図鑑はこれまでありませんでした。本書は、雲を理解するために最も重要なこの分類をすべて網羅、写真で示した初めての図鑑です。

◆雲の名前がわかると空で何がおきているかがわかるようになる!

 しかし、雲の名前がわかるようになると、何かいいことがあるのでしょうか? それはたくさんあります。

 たとえば、春や秋の空高く、長い尾を引く「巻雲」は、雲の中で成長した氷晶(氷の粒)が落下すると同時に風に流されることで特徴的な形になります。つまり、雲の尾の部分は本体よりも低い位置にあるのです。さらに、雲の形から、上空の風が高さの違いでどのように違うのかも想像できます。このように雲の立体的な形や、ダイナミックな空気の動きがわかるようになるのです。

 また、雲には成長していく過程にパターンがあるので、そこに現れる雲の名前とパターンを知った上で空を眺めると、今、空で何がおきているのか、これからどんな変化が起こるのかが予測できるようになります。たとえば、「積乱雲」が発達してかなとこ雲に発達していったり、その過程で雲頂の上に「頭巾雲」とよばれる帽子のような雲がかかることなどが予測でき、雲が繰り広げる一大スペクタクルをより深く楽しむことができるようになります。

 「あの雲の名前、なんていうの?」という素朴な疑問に答えつつ、広くて深い「空の科学」の世界へと連れて行ってくれる、ほかにはない魅力を持った一冊です。

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