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2011年6月

2011年6月29日 (水)

原発官僚
――漂流する亡国行政

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七尾和晃・著

四六判上製/224頁/定価1575円/2011年6月29 日配本

 

●霞が関の覇権争いから生まれた「原発列島」●
 福島第一原発で起こった大事故で、日本人は原子力発電の怖さを否応なく認識させられました。事故発生から三カ月を経てなお終息の道筋が見えない原発の惨状を前に誰もが疑問に思うのが、なぜ世界屈指の地震国である日本にこれほど多くの原発がつくられたのか、ということではないでしょうか。本書はこうした問題意識をもとに、日本の原発がもつ歪な構造を活写したルポです。著者は日本のエネルギー政策の舵取り役でありつづけた経産(通産)省の現役官僚・OBへの取材をもとに、この国を原発列島へと導いた「官の論理」を生々しく描いています。
 一九七〇年代のオイルショックを経て、通産省は新エネルギーの開発に注力することになりますが、そのなかで唯一、コストと発電規模において見通しが立ったのが原発だった、という元通産官僚の証言が本書にあります。そうした原発推進の論理に一定の合理性があったことは間違いありませんが、一方でそれは、通産省が原発という巨大な利権システムを使って地方にその勢力を拡張していくことともパラレルであった事実を本書は明らかにしています。省益を国益にすりかえる巧みなロジックで、通産省は日本のエネルギー政策を源流から掌握することに成功しましたが、その「無謬性の神話」の上に成立していたさまざまな施策がいかに危ういものであったかを、今回の原発事故は白日のもとに晒しました。日本のエネルギー政策はどうあるべきか。そして、この国の意思決定はどうあるべきなのか。明るい未来図を描くために、まず向き合わなくてはならないこの国の「闇」をみごとに描ききった一冊です。

2011年6月24日 (金)

図鑑 世界で最も美しい蝶は何か

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海野和男 写真と文
B5判 上製 136頁 オールカラー 定価3360円 2011年6月24日

アマゾン奥地の宝石ミイロタテハか? 青く輝くモルフォチョウか?


●やはり「美しい蝶」は昆虫好きの憧れ

 この本は世界の美しい蝶を集めて解説した図鑑です。著者の海野和男氏は、ご存知のとおり日本を代表する昆虫写真家の一人で、これまでさまざまな昆虫関連の本を出していますが、今回のように「世界の美しい蝶」だけをとことん追求してまとめた本は初めてです。氏は少年時代からの昆虫好きですが、やはり蝶には格別の思いがあるらしく、かつて図鑑を見て憧れた南方の豪華、華麗な蝶たちを、大人になってからは現地を訪ねて採集したり、写真に撮ったりしてきました。この本はその集大成でもあり、夢の実現でもあります。

●ミイロタテハをこれほど集めた図鑑はない
 この本には世界三大美蝶といわれるミイロタテハ(アグリアス)、モルフォチョウ、トリバネアゲハをはじめとして、キシタアゲハ、カラスアゲハをその亜種とともに400種ぐらい収めています。とくにミイロタテハは18~19世紀に欧米の収集家が熱狂し宝石扱いされたアマゾン流域の蝶ですが、この本には100種ぐらいの写真を載せており、これだけ多くの写真を載せた図鑑は世界にもないそうです。有名なパリのフルニエコレクションを撮影した写真を一部使っています。
 著者は実は一番美しいと思っている蝶はこのミイロタテハのサルダナパルスという亜種だと書いています(P27)。ジャングルの奥深く高所を飛んでいるので捉えるのは難しいが、人糞のトラップで捕まえるという話は、究極の美と人糞の対比で意外でもあります。またミイイロタテハの幼虫はコカの葉(コカイン)を食べるということで、毒蝶ではないか、だからあれほどの華美な色彩を持つのではないか、という考察も興味深いものがあります。
 世界最大の蝶アレクサンドラトリバネアゲハの原寸大の写真(P70~71)、世界で初めてメスの標本を自身採集したルソンカラスアゲハの写真(P112)、人類学者ウォーレスが興奮して採ったオレンジ色のトリバネアゲハ(P68~69)など面白い写真がこの本にはたくさん収められています。いずれにしろ、当代一流の昆虫写真家が撮ったたくさんの美しい蝶の写真、その素晴らしい色彩、多様な変化、デザイン、形態を見ているだけで見飽きることがありません。昆虫好き、自然愛好家にとって、素敵な贈り物ではないでしょうか。

日本帝国と大韓民国に仕えた官僚の回想

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任文桓(イム・ムナン)=著 鄭大均=序文

四六判上製 四六四頁 定価二九四〇円 二〇一一年六月

○加害・被害者史観で処理しない
 本書は、関東大震災の年(一九二三年、大正一二年)に一六歳で朝鮮から日本に渡り、苦学の末に東京帝大法学部を卒業、高等文官試験に合格し朝鮮総督府に行政官として勤務、戦後は李承晩政権時代に農林部長官(農林大臣)をつとめた韓国人、任文桓氏(一九〇七―一九九三年)が、その半生を日本語でつづった回想記です。一九七五年に『愛と民族』として同成社より刊行されたものを、このたび書名を改め復刻したしだいですが、本書の価値は、首都大学教授・鄭大均氏による序文の解説に尽きるように思われます。それを端的に言えば、日本統治時代の体験を「単純な加害・被害者史観で処理しようとするような態度は微塵もない」稀有な記録であるということです。現在の視点から過去を断罪する本ではないということです。

○客観公正に徹した貴重な記録

 客観公正であろうとする著者の意思は、たとえば自らの体験を語るにあたって自身の幼名バウトク(「岩の徳」の意)を一人称として使っているところに示されています。「新付日本人」の身の口惜しさは、おもに総督府官僚時代の回想部分にいくつも記されているものの、一方で著者は日本に渡って以来、多くの日本人の厚意をうけたことが自身の「人格形成にとってまことに貴重であった」(あとがき)と述懐しています。その叙述はきわめて冷静で、「恨」といった一方的な感情ではなく、日本に対するこうしたアンビバレントな思いこそ当時を生きた韓国の人々の実感であったのだと頷けます。著者は日韓二つの体制下で責任ある立場にいた人でした。そのような立場の人が客観公正を旨として書いた本書は、日本統治時代の現実を理解するうえで大変貴重な資料と言えるでしょう。

○魅力的な文章、爽やかな読後感
 資料的な価値もさることながら、本書は読みものとしても抜群の面白さをそなえています。日本にやって来た著者は、下関から東京に向かう途中、京都で下車するのですが、その直後に大地震の報を聞き、東京行きを諦めます。その後は錦沙の漂白工場の丁稚小僧を皮切りに「新聞配達夫、人力車夫、便所掃除夫、牛乳配達夫、大学教授邸掃除夫、家庭教師、岩波書店小売部店員などの職業に従事しながら、京都で同志社中学、岡山で第六高等学校、東京で東京帝国大学を卒業、そのうえ日本の高等文官試験に合格して、日本の役人に」なるわけですが、巧まざるユーモアと優れた記憶力とがあいまって、まじめで働き者の少年の成長の過程が細部までいきいきと描かれています。とりわけ旧制高校時代の級友、教師との交流は北杜夫氏の青春記を彷彿とさせ、読後感は実に爽やかです。

○戦中戦後の知られざる韓国史
 ここにはまた、終戦間際の満洲国(関東軍)による「第八計画」(第四章)などこれまで殆ど語られなかった史実が記されています。朝鮮戦争時の自身の逃避行など興味尽きないエピソードが次々に登場し、戦中戦後の韓国史の一端を垣間見せてくれます。

2011年6月20日 (月)

2011年版 間違いだらけのクルマ選び

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徳大寺有恒・島下泰久 著

46判/並製/256頁/定価1,470円/2011年6月

◆クルマ界は先の見通せない混沌とした時代に突入
 2006年に「日本車をよくするという当初の目的を果たした」として『間違いだらけ』は終刊を迎えましたが、それから5年、クルマ界は先の見通せない混沌とした時代に突入しました。ハイブリッドカーの隆盛、電気自動車の登場、クルマづくりのさらなる国際化、そして今後は長い将来にわたって中国・韓国などアジアのメーカーと国産メーカーの闘いが熾烈を極めるであろうことも間違いない情勢。「これからクルマはどうなってしまうんだろう」と思わされることが数多くおきています。
 だからこそ、いま、クルマについて語り、議論すべきことは、尽きないほどたくさんあるはず。独立・自由なクルマ批評の書籍は、『間違いだらけ』創刊時とは別の意味で必要とされており、またこれから先、将来にわたっても存在すべきだと、私たちは考え、復活を決意しました。
 新世代の『間違いだらけ』は徳大寺有恒さんと、徳大寺さんが仲間として選んだ最も有力な若手自動車ジャーナリスト、島下泰久さんの共著です。これまでの『間違いだらけ』の批評精神を継承しつつ、新たに発展していくための盤石な体制を整え、『間違いだらけ』は再スタートを切ることとなりました。

◆クルマの「いま」を明確に示す一冊
 復活第一段の本書、『2011年版間違いだらけ』は、クルマ界の問題は何なのかを明確に示し、さらに国産車をはじめとする各車種を全体の中ではっきりと位置づけるという、まさに時代を切り取る一冊となりました。『間違いだらけ』がなかったこの5年あまりの間に、クルマはどう変化したか、クルマ界の先行きはどうなるか、という疑問に答えるものになっています。クルマ好きの方から、クルマを久しぶりに買い換えようとしている方まで、広く読んでいただきたい一冊です。
 
◎2011年版の指摘
ハイブリッドに頼らない低燃費技術が今後の焦点だ
日本車が「安くて良い」だけで勝負するなら必ず負ける
愛着の持てるクルマを作れ。この一点に尽きる
自動車交通のエコをクルマに押しつけ過ぎていないか?

◎車種評より
ソリオ=ユーザーを見据え練りに練った意欲作
プリウス=エコばかりを大事にしすぎじゃないか?
セレナ=トップセラーとして為すべき事を為せ
CR-Z=エコで運転も楽しい痛快なクルマ
VWポロ=またドイツにやられた…。溜息の出る1台
BMWミニ・クロスオーバー=「確かにミニだけど…」とモヤモヤする

草思社本サイトの特設ページでは、1976年と77年に発行した最初の『間違いだらけ』がweb上で読めるように無料公開しています。こちらもご覧ください。

http://www.soshisha.com/car/

2011年6月17日 (金)

【新装版】いつまでも、いつまでもお元気で

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知覧特攻平和会館・編

四六判上製/92頁/定価1050円/2011年6月


 ●特攻隊員33名の遺書・遺詠を美しい風景写真とともに紹介●

 この本は、太平洋戦争末期、知覧(鹿児島県)をはじめ各地の基地から飛び立った特攻隊員の遺書・遺詠を美しい風景写真とともに紹介した本です。本書の書名も隊員の手紙の一節がもとになっています。
 昭和二十年の春から夏にかけて、知覧からは陸軍の特別攻撃隊四百数十機が飛び立ち、沖縄周辺の米軍艦船に文字通り突撃しました。飛行機ごと敵艦に突入するという任務に志願したのは将来ある若者たちでした。
 二度と戻ることのできない出撃を前に書かれた手紙からは、心やさしい青年たちの姿が浮かび上がってきます。家族と過ごした日々を懐かしみながら、親孝行できなくなることを幾度も詫びる息子。妹に両親の世話を頼むいっぽうで、「と言っても、できれば早く嫁に……」と心遣いを見せる兄。「人のお父さんをうらやんではいけませんよ」と優しく諭す若いお父さんの手紙もあります。この国を守るために身を捨てるのだという固い決意と、そこからはみ出す一抹の哀しみ。そのどちらも、まごうかたなき真実であったといえるでしょう。過酷な時代を生きた青年たちのまっさらな肉声に、ぜひ耳を傾けてみてください。

2011年6月10日 (金)

理系の人はなぜ英語の上達が早いのか

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東京農工大学准教授 畠山雄二著

四六判並製/192頁/定価1470円/2011年6月 

本書を3回読めば、英語の読み方はガラリと変わる

「科学雑誌」を読むだけで「使える英語」が自然と身につく

●英語学習は「何」を読むかで成果が決まる
 本書は東京工業大学と東京農工大学で学生たちに大人気の英語講座のエッセンスをまとめたものです。大学受験時には文系学生のほうが理系学生よりも英語ができるのですが、卒業後社会に出てから英語を実務的に使いこなしているのは理系の人のほうが多いのが現実です。文系の人は高度な文法知識を持っていても、うまく使いこなせないため様々な英語教材に手を出しては、失敗してしまっている方が多いのではないでしょうか。
 では、なぜ理系の人のほうが英語上達が早いのか。著者によると、読んでいる英語に差があると指摘します。著者は「英語の力」をつける最高の教材は「科学記事」であると断言します。なぜなら科学記事はネイティブでもノンネイティブでも世界の誰が読んでも正しく理解できるようシンプルで正確な英文法で書かれている、英語のお手本だからです。 世界の一流科学雑誌は、厳しい審査を通りぬけた英語教材の宝庫というわけです。
 理系の大学では1年次、2年次に「科学記事」をベースに徹底的な英文読解の訓練をしています。それが社会に出たあとの「差」になっているのです。
 本書は、全10コマの講義形式となっており、それぞれの講義を通読することで、結果的に英文とはこういうふうに読んでいけばいいのかがわかるように書かれています。

●本書で紹介する「脳内文法」をマスターすれば、英語の読み方が驚くほど変わる
 理論言語学の研究者である著者の研究対象は英語ネイティブの頭の中にある「脳内文法」です。英語ネイティブがどう英語を読み、意味を理解しているかを基にした「脳内文法」は、日本の学校で教わる「日本人がつくった英文法」とはまったく違います。このネイティブの「脳内文法」を本書を通じて身につけることで、読了後には、これまでと明らかに英語の読み方が変わってくることが実感できるのです。まさに読んでいるだけで、頭の中が英語ネイティブ回路に変わっていくという、画期的な英語上達法なのです。
 “英語公用化時代”に向けて、本書がお役に立つことを願ってやみません。

もし、お釈迦さまに人生の悩みを相談したら

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向谷匡史・著

四六判並製/216頁/定価1365円/2011年6月


●「釈迦語録」を使って解き明かす不満・焦燥・絶望の正体●

 千年に一度の大災害といわれる東日本大震災が私たちに突きつけたのは「今のままの生き方でいいのか?」という問いかけであったように思います。ですが、この問いに自信をもって「イエス」と答えられる日本人はあまりいないでしょう。他人の人生が輝いて見える、仕事がおもしろくない、人間関係が辛い、お金が足りない、老後の生活が不安……私たちを苦しめる悩みはさまざまですが、いずれにしても、何らかの不全感を抱えながら私たちは生きています。そんな悩みの根っこに何があるのかを、お釈迦さまの言葉を使って解き明かしていくのが本書です(お釈迦さまの言葉は『ダンマパダ』(法句経)を中心に紹介しています)。私たちの「悩み」はそこに厳然として在るものではなく、自分の心が作りだした魔物なのかもしれない――ときに巧みな比喩をまじえて語られるお釈迦さまの言葉は、私たちにそんな「気づき」をもたらしてくれます。この本が、ままならない現実の中で苦悶する私たちにとって〝希望の光″となることを願ってやみません。

 

 [悩みの例]
●人間関係のミスを引きずってしまう。
●競争で心が壊れそう。
●家族の死が受け入れられない。
●華やかな過去が忘れられない。
●自分の仕事が正当に評価されない。
●決意が長続きしない。
●子どもの叱り方がわからない。
●もっとお金がほしい。

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