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2011年7月22日 (金)

毛沢東の大飢饉
――史上最も悲惨で破壊的な人災1958―1962

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フランク・ディケーター=著 中川治子=訳

四六判上製 五七六頁 定価二九四〇円 二〇一一年七月

○党資料から総死者数四千五百万人と推計
 一九八四年、アメリカの人口統計学者ジュディス・バニスター女史は、毛沢東が発動した「大躍進」運動中(一九五八―六二年)、大規模な飢饉が発生し、三千万人の死者が出たと論文で発表しました。当時は誰もが「信じられない」と述べたそうですが、その後、この時期の農村の状況について調査した中共党高級幹部で、天安門事件後アメリカに亡命した陳一諮氏が、犠牲者数は四千三百万から四千六百万人にのぼることを明らかにしました。香港大学のディケーター教授は五年の歳月をかけ、地方の党公文書館(=档案館。党中央档案館はアクセス不可)で機密指示が解除された資料を精査し、総死者数は控えめに見積もって四千五百万人、うち二百五十万人は拷問死、あるいは裁判なしの処刑死であったとの結論に至りました。本書は、この膨大な党の資料、飢饉体験者の証言を基に、総死者数を含めて、中国共産党の最大のタブーというべき「大躍進」運動の全体像を初めて詳細に描き出したものです。原書Mao’s Great Famineは英『エコノミスト』誌をはじめ各紙誌の〝ブック・オブ・ザ・イヤー二〇一〇〟に選ばれ、また、先ごろ(七月六日)、優れたノンフィクション作品に贈られるイギリスの「サミュエル・ジョンソン賞」を受賞しています。

○党指導部は人災であることを知っていた
「大躍進」運動は、水利事業、人民公社、製鉄キャンペーンを柱とし、集団化を進め、農村の労働力を大量動員して農業と工業をともに発展させ、後れた中国経済を一気に近代的共産主義社会へと転換するという毛沢東のユートピア構想でした。このビジョンは僅か一年で破綻、中国は一九六二年まで大飢饉に見舞われます。党指導部はこれを一貫して「三年の自然災害」と言ってきました。しかし、これは明らかな人災、「毛沢東の大飢饉」であったことは本書によって十分に立証されたと言えます。たとえば、多くの水利事業に農民を動員したことで農作業ができず農地が荒れ果てます。地方の党幹部はノルマ達成のために収穫量を水増し報告し、それに基づいて国が穀物を買い上げたことから農民が食べる食糧、翌年の播種分がなくなります。肝心なのは周恩来や劉少奇をはじめ党指導部が飢饉の発生をその初期から知っており(「人肉食」があることまで)、人災であることを承知していながら運動を中止できなかったことです。それは、「半分が餓死した方が得策、後の半分が食べられる」とうそぶく毛沢東の粛清を恐れたためでした。

○「毛沢東の誤り」を認めよと説く党幹部がいる!
「大躍進」は中国共産党の基盤であるはずの農民、労働者を徹底的に痛めつけました(農民の悲惨さは筆舌に尽くしがたいものがあります)。これを毛沢東の誤りと認めるか否かは党支配の正統性が問われる問題です。現代中国を鋭く洞察する鳥居民氏は「解説」の中で、党の資料を使って書かれた本書が世に出たこと自体、毛の誤りを認めよと説く高位の幹部がいることの証左だと分析しています。本書の内容を史実として公式に認めることが、党の存続に不可欠な政治改革、民主化に繋がると考える幹部がいるということです。  

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