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2011年12月15日 (木)

ある警察官の昭和世相史

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原田弘 著

四六判 上製 248ページ 定価1890円 2011年12月

警察官はつらいよ。警察官という仕事と人生を描く。写真・資料多数。

●警察官の日常を描いた珍しい回想記
 著者は本書にあるとおり昭和二十年に警察官となり昭和六十年で退官するまで、四十年間警察官一筋に勤め上げた人です。途中即席英語教育を受けて占領軍のМPに付き従う通訳警察官(通称МPライダー)として派遣されていた期間はありますが(この体験は小社既刊『МPのジープから見た占領下の東京』に詳しい)、一貫して警視庁の警察官としてさほど出世もせず、つねに現場や街の中で過ごした人生でした。本書はその警察官人生の回想記ですが、功成り名を遂げた警視総監や名物刑事の回想はよくありますが、一介の警察官の回想記は珍しいうえに、ものを書いたり記録したりする趣味があり、下積みの警官の目から見た日常や世相が生き生きと描かれた貴重な読み物となっています。

●昭和の重大事件の記録と警察官風物誌
 本書の内容は二つに大別されます。一つは昭和の重大事件を目の当たりにした体験談であり、もう一つは警察官の勤務や給料や制服や交番や制度についての体験と資料をあたっての記録です。前者では東京大空襲下の消火活動(前歴は消防夫だった)やマッカーサーの警護、荒れ狂うデモ警備や爆弾テロ警備、三島事件当日の思い出などなど。とくに大成建設爆弾テロ事件では爆風に吹き飛ばされるという危険にも遭遇しています。後者では安月給や交番勤務の辛さをなげき、終戦直後の制服のいい加減だったことなどがつづられます。どの記述も著者の温厚な人柄がしのばれるちょっとユーモラスな筆致で進められ、思わず微笑んでしまうエピソードが満載です。
 デモ警備で負傷した著者を病院では「権力の手先」としてデモ学生の治療が優先され、後回しにされた苦い思い出がつづられる個所がありますが、辛いことが多い割には報われない警察官という職業に著者は複雑な思いを抱くと同時に誇りの感情も持っています。本書はまた現役警察官へのエールでもあります。ユニークな回想記だといえましょう。

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