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2012年8月

2012年8月23日 (木)

私がアイドルだった頃

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長谷川晶一・著
四六判上製/376頁/定価1890円/2012年8月


●凝縮された時間の中で人生の浮沈を味わった女性たちの「告白」●

 本書には13名の元アイドルが登場します。元おニャン子、元・少女隊、元セイントフォー、元ミニスカポリス、元ギリギリガールズ、元チャイドル、元グラビアクイーン、元・着エロクイーン……さまざまな個性で時代を駆け抜けた女性たちに、著者はあえて同じ質問を投げかけました。その質問、「生まれ変わってもアイドルになりたいですか」に対して、彼女たちがおしなべて「もう一度やってみたい」と答えているのは興味深い点です。ですが、「娘が生まれたらアイドルにしたいですか」という問いかけにはほぼ「やらせたくない」という答えが返ってきているところに、アイドルという存在が孕む矛盾が否応なく表れています。その過酷なアイドル稼業の内幕は本書に譲りますが、若くしてさまざまな苦難を乗り越えてきた彼女たちの言葉には名状しがたい深みがあります。良いことも悪いこともあって私たちの生は充実したものになるのだ――そんなことを考えさせられる本です。

【本書から】
●「私にとって一番頑張った時期。自分を褒めたい時期。とってもいい時期。だって、今できないもん、あんなに死に物狂いで頑張るなんて……きっと棺桶に入るときに思い出すのもセイントフォーだと思う」(濱田のり子)
●「後悔すること? うーん、後悔はないです。でも……正解でもないな」(宮内知美)
●「アイドルとは《時代の産物》じゃないかな? 時代のニーズに合った人がトップをとっていくものだと思うから……」(新田恵利)
●「今はアイドルじゃないですね。今? 今は《矢部美穂》です。自分の生き方を曲げずに仕事をさせてもらっているから」(矢部美穂)

病を癒す希望の力
――医療現場で見えてきた「希望」の驚くべき治癒力

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ジェローム・グループマン著 菅靖彦・田中淳一訳/2012年8月

四六判/上製/264頁/定価2415円(税込)

「希望」と「治癒」との関係性を、豊富な臨床例と科学的知見から検証

 がんや血液疾患を専門とする医師が、30年以上にわたる自らの臨床経験と最新の科学的知見をもとに、「希望」と治癒力の関係を考察した本書は、ニューヨークタイムス等でベストセラーになった話題の書です。
 意識や感情のありようが治癒力を高め病気を克服する、ということは昨今かなり広く言われています。しかし現実には、どれほどポジティブな意識や感情を持っていようとも病に打ち克てないケースは少なくありません。
 その一方で、きわめて重篤な病状にあり治療者を含め誰もが諦めるような状況にありながら、希望をもちつづけ驚くべき回復を見せたというケースもあります。いったいそこでは何が起こっているのでしょうか。
 著者は、自身が体験してきたさまざまな臨床例を、さながらドキュメンタリーのような迫真の筆致で再現していきます。また自ら長期にわたって苦しめられた痛みとの戦い、それに対する医学の非力と、驚くべき効果をもたらした治療法の存在。治療者としての視点だけでなく、苦しみに苛まれる患者としての体験をふまえたうえで、「希望」というものが病気に、さらには人間の有り方生き方にどれほど深くかかわっているかを、最新の科学的知見をひきつつ検証していきます。
 もちろん、現時点ではまだ「希望」と「治癒」との明快な関係性を結論づけることはできません。しかしながら、つい最近まで研究の対象にもなりえなかった「希望」の影響力について、真剣に取り組む必要性が出てきたことを著者は指摘しています。
 本書は医療の現場における新たな可能性を示唆すると同時に、人間の肉体と精神との関係性を知る新たな地平をも拓いてみせる貴重な書だと言えます。『医者は現場でどう考えるか』(How Doctors Think)などの名著を発表しているグループマン博士の話題の書の全訳です。

病気をよせつけない足をつくる

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中京大学スポーツ科学部教授 湯浅 景元(ゆあさ かげもと)著
四六判並製/224頁/定価1470円/2012年8月

  毎日の簡単な足の筋トレ、ストレッチ、ウォーキングが
  全身の衰えを予防し、病気にならない体をつくる!

足の不調は隠れた病気のサイン
 階段で足があがらない、つまずく、むくみがとれない、冷える、足がつる…。そんな足の不調に困っていませんか? 足が衰えてくると、運動不足が加速し、全身が衰えてきます。運動不足は心臓血管の病気、骨の病気、胃腸の病気、脳の病気の原因となることが、さまざまな研究調査を通してわかってきました。最近では、運動不足だとお酒を飲まなくても脂肪肝や肝炎になる可能性が高いことも解明されてきました。
 病気をよせつけないためには、運動という刺激を体に与えることを継続することが重要で、運動の中でもとくにウォーキングのように全身を移動させる運動が病気の予防に効果的です。
 私たちは毎日必ず歩きます。外出しない日でも、家の中では家事のときやトイレやお風呂に行くときも必ず歩いています。毎日行う歩行ですが、その歩き方を工夫するとさまざまな生活習慣病予防に効果があるということを本書ではとくにご紹介します。とりわけ現代人に特有の病気である、高血圧、糖尿病、高脂血症、骨粗しょう症、心疾患、認知症を予防する足の運動法と歩き方をわかりやすく解説します。このほかにも家や会社で座ったままできる足の筋トレやストレッチなども多数ご紹介します。丈夫な足をつくり、自立した生活を送るために役立つ一冊になると存じます。

もう一つの地球が見つかる日
――系外惑星探査の最前線

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レイ・ジャヤワルダナ/阪本芳久訳
四六判/上製/304頁/定価2,310円/2012年8月


◆科学界でいま最も熱い領域! 太陽系外惑星の探査
 地球のような惑星はほかにはないのか? 生命は地球にしか存在しないのか? 人類が長年抱いてきた素朴な疑問に、いま、答えを出ようとしていることをご存じでしょうか。太陽系外の惑星=系外惑星の探査が近年驚くべき進歩を遂げており、もうじき地球にそっくりな惑星が発見されるというところまで、われわれは到達しているのです。
 1990年代中頃に最初の系外惑星が発見されるまで、知られている惑星はこの太陽系を回るものだけでした。それがいまや、数光年以上の遠く、場合によっては1万光年以上の彼方にある惑星の存在が確認されており、その数は500個を超えているのです。現在の系外惑星探査は、まさに発見に次ぐ発見。これほどまでに数多くの成果が短期間に上がっている領域は、科学界でもそうはありません。

◆遠くの惑星の大きさ、公転・自転周期、大気組成から気象までわかる
 驚くべきなのは発見されている惑星の数だけではありません。惑星の特徴についても、いまやかなりのことがわかっています。大きさや質量、公転周期、表面温度、惑星の物質構成、場合によっては大気の構成、自転周期もわかります。それだけでなく、気象現象(強力な風の発生、温度変化など)までも、その徴候が観測されるようになっています。
 系外惑星に、生物がいるかどうかを観測から知るという課題にも、研究者たちは懸命に取り組んでいます。系外惑星に水や酸素があるか、生命活動の徴候を示すメタンが存在するかなどの観測手法の研究も進められており、そう遠くない時期に「生命の証拠」が手に入る可能性が高まっているのです。

◆なぜ成果が急激に? 研究者たちの闘いと勝利の歴史
 系外惑星探査の驚くべき成果は、このわずか十数年のあいだに急激に得られたものです。それまでの系外惑星研究といえば、天文学の中でもマイナーな存在で、予算も世間の注目も集められず、研究者たちは数十年間にわたって不遇の時代を過ごしてきました。その状況を一変させたのは、望遠鏡技術の急速な進展と、研究者たちの創意工夫による新しい観測方法の開発です。本書ではそういった技術的背景や、状況を覆した研究者たちのドラマなど、系外惑星探査の歴史的・人間的な側面も描かれています。本書の著者は、系外惑星を初めて画像として捉えるという画期的な成果を出した現役の研究者。まさにこの領域のただ中に身を置いているので、その文章からは、発見に湧く現場の興奮や、ひりつくような研究者間の競争の様子までが伝わってきます。科学界で最も熱い領域でいま、何がおきているのか。科学のいまを知りたいのなら、ぜひ読んでいただきたい一冊です。

2012年8月 8日 (水)

和紙の里 探訪記
――全国三百ヵ所を歩く

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菊地正浩 著

四六判 上製 312ページ(カラー8ページ) 定価2625円(本体2500円)/2012年8月

貴重な文化伝統であり、日本の風土から生まれた手漉き和紙が危機に瀕している。
全国の「紙里」を訪ねて、和紙の今を探った労作。

●和紙がなくなると文化も風土もなくなる
 明治時代に6万8千戸もあった紙漉き屋が現在では数百戸に激減しているといいます。もちろんこの過程には製紙工業の発展や大規模化があって、普段の紙の需要はまかなわれていますが、洋紙到来以前からあった和紙は現在かろうじて古文書修復や美術品、伝統文化に必要とされているだけで、作り手の減少から、「絶滅危惧種」になりつつあります。江戸期までには各藩の奨励もあって全国規模で隆盛を誇っていた手漉き和紙は、はたして生き残れるのかという問題意識をもって、著者が二年半かけて全国三百か所の「紙里」を訪ね歩いたのが本書です。日本固有の発展をとげた和紙の伝統は、日本文化とも深く結びついており、また特有の植物(コウゾ、ミツマタ、ガンピ)や清冽な水流など、自然風土にも依存しています。これを維持することがかつて「紙の国」であった日本を大切にすることにつながるのではないかと本書を読むと深く考えさせられます。

●和紙がいかに貴重かがよくわかるエピソード満載の旅行記、ガイド
 著者は旅行ジャーナリストであり、取材はマイカーを駆っての全国走破となりました。各地に残された伝承や資料、祭事、お土産の工芸品など、たくさんの和紙関連物に触れることができました。ピカソや棟方志功、竹久夢二が愛用した版画用の名門和紙、紙幣用のミツマタの和紙を産する岡山の紙里、越前や美濃、土佐などの代表的産地、宮中歌会始め用の那須烏山の和紙、さまざまな特徴をもった世界にも比類のない和紙文化が日本にあることがよくわかります。またその手漉き和紙がいまや継承者の激減や過疎化がすすむ、地方文化衰退の典型ともいえる現状を呈していることも目の当たりにすることができます。その一方で、和紙を守ろうと一代で手漉き和紙を作る若者やパイオニアがいてかすかな希望も目にしました。本書では、荒廃する日本列島と、もともと豊かな風土や地方文化との対比が、和紙という主題をめぐって展開され、さまざまなことを考えさせられる好著になっていると言っていいでしょう。

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