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2012年8月 8日 (水)

和紙の里 探訪記
――全国三百ヵ所を歩く

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菊地正浩 著

四六判 上製 312ページ(カラー8ページ) 定価2625円(本体2500円)/2012年8月

貴重な文化伝統であり、日本の風土から生まれた手漉き和紙が危機に瀕している。
全国の「紙里」を訪ねて、和紙の今を探った労作。

●和紙がなくなると文化も風土もなくなる
 明治時代に6万8千戸もあった紙漉き屋が現在では数百戸に激減しているといいます。もちろんこの過程には製紙工業の発展や大規模化があって、普段の紙の需要はまかなわれていますが、洋紙到来以前からあった和紙は現在かろうじて古文書修復や美術品、伝統文化に必要とされているだけで、作り手の減少から、「絶滅危惧種」になりつつあります。江戸期までには各藩の奨励もあって全国規模で隆盛を誇っていた手漉き和紙は、はたして生き残れるのかという問題意識をもって、著者が二年半かけて全国三百か所の「紙里」を訪ね歩いたのが本書です。日本固有の発展をとげた和紙の伝統は、日本文化とも深く結びついており、また特有の植物(コウゾ、ミツマタ、ガンピ)や清冽な水流など、自然風土にも依存しています。これを維持することがかつて「紙の国」であった日本を大切にすることにつながるのではないかと本書を読むと深く考えさせられます。

●和紙がいかに貴重かがよくわかるエピソード満載の旅行記、ガイド
 著者は旅行ジャーナリストであり、取材はマイカーを駆っての全国走破となりました。各地に残された伝承や資料、祭事、お土産の工芸品など、たくさんの和紙関連物に触れることができました。ピカソや棟方志功、竹久夢二が愛用した版画用の名門和紙、紙幣用のミツマタの和紙を産する岡山の紙里、越前や美濃、土佐などの代表的産地、宮中歌会始め用の那須烏山の和紙、さまざまな特徴をもった世界にも比類のない和紙文化が日本にあることがよくわかります。またその手漉き和紙がいまや継承者の激減や過疎化がすすむ、地方文化衰退の典型ともいえる現状を呈していることも目の当たりにすることができます。その一方で、和紙を守ろうと一代で手漉き和紙を作る若者やパイオニアがいてかすかな希望も目にしました。本書では、荒廃する日本列島と、もともと豊かな風土や地方文化との対比が、和紙という主題をめぐって展開され、さまざまなことを考えさせられる好著になっていると言っていいでしょう。

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