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2013年3月13日 (水)

「日本国憲法」廃棄論
――まがいものでない立憲君主制のために

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兵頭二十八[ひょうどう・にそはち]=著
四六判上製 二五六頁 定価一六八〇円

 ○制定までの半世紀の歴史をふり返り、「廃憲」を説く
 戦後何度となく俎上にのぼった憲法改正問題ですが、ここにきて「改憲」に意欲を示す安倍首相の下、いよいよ現実味を帯びた論議が始まる気配となっています。本書は、十九世紀後半に、少数の賢人が世界を統治するというプラトン流の理想社会を夢見たH・G・ウェルズの思想(「世界単一政府」構想)から説き起こして現行憲法制定にいたる半世紀をたどり、マッカーサー占領軍(=米国)が作成した憲法草案を日本側が〝丸呑み〟するまでの経緯を明らかにしたうえで、現行憲法は改めるのではなく廃棄すること(廃憲)が日本国民の自由と安全を守るためには最善であると説いたものです。

 ○世界の思想潮流を読めず、自己正当化を怠ったツケ
 著者兵頭氏が廃憲の根拠とした制定までの歴史は第2部で叙述されていますが、これが本書の中核をなすものであり、軍事をはじめとする該博な知識が横溢し、まさに圧巻。ぜひとも精読していただきたいところですが、以下にこれを要約します。
〈一九四一年、ウェルズの思想に影響を受けた米大統領F・D・ローズヴェルトは年頭の一般教書演説において「四つの自由」を打ち出す。その含意は、超大国アメリカが侵略国家を武装解除させ、最終的に世界軍縮を実現させるというもの。一方、日本は同年十二月の開戦奇襲を「自存自衛のため」という、きわめて内向きの説明で済ませたことから(ヒトラーやスターリンの「開戦説明」が長々と自己正当化の文言を並べているのとは対照的で、世界への発信力に欠けていた)、結果、日本はローズヴェルトがいうところの「侵略国家」であるとの認識が確定。ウェルズ、ローズヴェルトら欧米の思想潮流を遠因とし、日本側の「開戦説明」のお粗末さが格好の材料となり、日本から自衛権すら明白に奪おうとする憲法草案が作られる。マッカーサー占領軍は天皇制維持の保障を曖昧にしたまま、梨本宮元帥逮捕、左翼勢力の容認といったプレッシャーをかけつづけ、ついに日本の要路はこれを受け入れることとなった〉
 兵頭氏はこの経緯をふまえて、現行憲法は連合国が占領軍を通じて占領下の他国民に無理やり押し付けた(このこと自体が「ハーグ陸戦条規」違反)珍妙無類の「偽憲法」であると断じ、「改憲」はすなわち、自由な立場の日本国民がわざわざ意志的に「偽憲法」を追認することを意味すると述べ、まずはこれを廃棄すべきであると説くのです。

 ○改憲vs.護憲のパラダイムに転換を迫る斬新な主張
 では、廃棄したあとはどうするのか。国民の団結をはかるためにも、また、独裁政権のような「特権の暴走」を許さないためにも、まがいものでない立憲君主制を取り戻すことが必要だとする兵頭氏は、「日本は立憲君主制の近代国家である」と明快に言語化した「明治憲法のバージョン2」を作るべきであると主張します(「まえがき」と第3部で詳述)。いま為すべきなのは、現行憲法の改正ではなく、明治憲法の改正であるとの主張は斬新です。内外の情勢の変化を見れば、条文解釈の相違に収斂していく改憲vs.護憲のパラダイムは、もはや通用しないのではないでしょうか。こうしたなか、歴史に鑑みて第三の選択肢を示した本書は、まことに時宜にかなった一冊と思われます。

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