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2013年10月

2013年10月31日 (木)

異端の統計学 ベイズ

2001

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シャロン・バーチュ・マグレイン著 冨永星訳
46判/並製/512頁/定価2,520円

◆大注目の統計理論「ベイズ統計」に関する初めての一般向け書籍
 本書は、現在注目を集めている統計学の中でも、これからの世の中のあり方に大きな影響を与えると考えられている理論「ベイズ統計学」について一般向けに書かれた初めての本です。
 ベイズ統計学は、1990年代/21世紀初頭ころから急激に応用が進展した統計理論で、使われる範囲は人工知能、機械翻訳、意思決定理論、暗号解読、遭難船捜索、画像解析、ビッグデータ解析に自動運転車など多岐にわたります。身近なところでは、メールソフトの「迷惑メール除去」にも使われています。何かに関する予測や仮説を、新たに得られた情報で更新してよりよい予測や仮説を得るというところに特徴があり、コンピュータの発達にともなって実用化が進みました。とくに人工知能分野においては、コンピュータに大量のデータを読み込ませて自動的に学習させる「機械学習」をベイズ統計が可能にし、このことにより近い将来、人間に比肩するような高度なAIが実現するのではないかと考えられています。

◆150年以上にもわたり、「異端の理論」とされてきた理由は?
 ベイズ統計は250年以上の歴史を持ち、起源は1740年代のイギリスまでさかのぼることができます。しかし、実はこのベイズ統計、今でこそ注目を集めていますが、その歴史の大半において統計学界では「異端の理論」とされ、大学などでは公に論じたり教えたりすることもはばかられる状況が、つい最近、1990年ころまで続いていました。
 統計学界は「頻度論者」と呼ばれる主流派と、「ベイズ派」と呼ばれる少数派に分裂していて、ベイズ派は長年にわたり完全に劣勢でした。ベイズ統計は、主流派から「ナンセンス」とか「不健全」だと言われ、ベイズ理論で解析・研究された報告書を政府機関に提出すると差し止められたり、議論が紛糾し不採用とされることも珍しくありませんでした。しかし、そういったベイズ理論による報告書の中には、スリーマイル島原発事故やスペースシャトルの事故を驚くほど正確に予測したものもあったのです。
 なぜ、ベイズ統計は100年以上にもわたって異端視されたのか。長い不遇の時代、ベイズ派の統計学者はどのように研究を続けたのか。その逆境を跳ね返し、最先端理論として注目を集めるほどになったのはなぜなのか――。
 本書は、虐げられてきたベイズ統計が突然注目を集めるようになるまでの、数奇な遍歴を初めて物語る一冊です。物語の中では、いまだに機密扱いを受けている戦時下・冷戦下でのベイズ統計のスリリングな活躍、およそ科学的とは言い難いほどにどろどろとしたベイズ派と主流派との闘いなどが繰り広げられます。「統計学」という言葉でイメージする無味乾燥な世界とはかけはなれた、人間ドラマがそこにはあります。これからの世界を変えるかも知れない理論を、不遇の歴史の中で一歩一歩前進させてきた人たち足跡をたどる――。統計学に少しでも興味のある方には、ぜひ読んでいただきたい一冊です。

2013年10月30日 (水)

鳥居民評論集 昭和史を読み解く

1995

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鳥居民(とりい・たみ)著

四六判並製 352ページ 定価1680円

今年亡くなった慧眼の近現代日本史家・中国研究家の単行本未収録エッセイ集。
独自の史観から、太平戦争、原爆、ゾルゲ事件、近衛文麿、昭和天皇などを語り尽くす。

●惜しくも急逝した慧眼の近現代史家
 今年一月に急逝した慧眼の近現代日本史家であり、中国研究家の単行本未収録のエッセイ、対談等を集めた評論集第一巻(続編として現代中国を予定)。驚くべき洞察力、独自の史観、膨大な資料博捜、市井の研究家として大著『昭和二十年』(既刊13巻、未完に終わる。草思社刊)を書き続けて、昭和史の研究家たちにひそかに多大の影響を与えてきた著者の偉業の一端を示すエッセイ群。一つひとつが示唆に富む無類に面白いエッセイや対談である。戦後の史観を拘束し続けてきた各種イデオロギーから限りなく自由に資料を読み、通説を覆す刺激的な指摘に満ちている。死後もなお輝きを増す孤高の歴史家の貴重な一冊。

●内大臣木戸の開戦責任、原爆狙い撃ち説など、通説を覆す指摘
 第一章太平洋戦争を読み解くための読書案内から始まるが、これは数年前Web版草思という草思社のPRページに連載されていたもの。『清沢冽・暗黒日記』『木戸幸一日記』『評伝・近衛文麿』『高松宮日記』などについて書かれているが、膨大な資料を読み込んできた著者ならではの極めて良質な読書案内となっている。その他、PR誌などに書かれたものなど一般に目に触れていない短いエッセイが多く、却って著者の史観がわかりやすい。氏が指摘してきた独自の見解をいくつか列挙してみよう。
「原爆は終戦を意図的に遅らせて投下したトルーマンの作為である」「開戦を避けようとした近衛首相、開戦に重大責任がある内大臣木戸の役割」「終戦の動きは貞明皇太后の働きかけから始まる」「山本五十六と高松宮の避戦の行動」「日本軍の行動が共産党に漁夫の利を得さしめた構図」「横浜事件、ゾルゲ事件のあっけらかんとした真相」「戦後の欺瞞的体制を決定した木戸・ノーマン・都留史観」など。
 現在でも納得できる刺激的指摘である。最も一般的に読める鳥居民史観入門書。

◎第二巻『鳥居民評論集 現代中国を読み解く』来年二月刊行予定。

2013年10月22日 (火)

崖っぷち社長の挑戦
――湘南ベルマーレに懸ける夢

1962

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湘南ベルマーレ社長・眞壁 潔著
四六判/並製/256頁/定価1575円(税込)


存続の危機にあった「湘南ベルマーレ」を引き受け
以来10年にわたって舵取りを続ける著者の夢と情熱!

 著者の本業は造園業でサッカーはド素人。なのに、軽い気持ちでプロサッカー球団の社長を引き受け14年。チーム成績は不振、スポンサーは倒産、債務超過に存続危機……なんでこんな苦労しなくちゃならないんだ? 自問自答しながらも、理念はブレず突き進むうち、周囲に多くの“宝”があることに気づく。チャレンジ精神を失わない真壁社長の初の著作は、スポーツはもちろん、子どもの育成や地域振興などの在るべき姿を教えてくれる。

本書内容より
・湘南にベルマーレあり        ・存続危機を乗り越えて
・目指せ! 欧州型スポーツクラブ    ・僕が無給で社長を続けるワケ
・「体育」は「スポーツ」じゃない    ・クラブ経営はギャンブルだ
・銀行は貸してくれない        ・「集中と選択」なら誰でもできる
・スポンサー企業が突然破綻した!・入場者数アップに王道なし
・魅せるチームづくりのカギ    ・今日来てくれたお客さんを満足させろ
・まず「人」をつくる        ・僕らの国際社会貢献
・小学校にベルマーレがやってきた    ・新たなビジネスモデルを切り拓く
・目指すは「スポーツコンビニ」    ・「住んでてよかった」と思われる街に
……など

トップシークレット・アメリカ
――最高機密に覆われる国家

2009

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デイナ・プリースト、ウィリアム・アーキン著、玉置悟訳

四六判/上製/360頁/定価2730円(税込)

膨大な「最高機密組織」の迷宮が覆うアメリカの驚くべき実態
 9.11以降のアメリカは国を挙げて対テロ戦争の態勢をとり、あたかも警察国家のごとき様相を呈している。情報機関や治安当局が最新の監視システム、情報処理システムを駆使し、CIAや特殊部隊がテロ工作員を殲滅、いまやアルカイダは世界に数百人しかいないとも言われる。にもかかわらず、アメリカではいまだに警戒レベル「イエロー」(テロ攻撃ハイリスク状態)にあり、国家安全を大義とする膨大な数の組織(政府、民間とも)を抱えつづけている。
 それらの組織は「最高機密(トップ・シークレット)」を扱うものとして活動を続けるが、1200を超える政府組織に25万人以上の従業者、そして政府から業務を請け負う民間会社の人員を含めると、じつに85万人もの人間がなんらかの「最高機密」にアクセスしているという異常事態となっている。
 まさに最高機密のジャングルと化したアメリカだが、果たしてその組織は何から何を守り、どんな活動をしているのか。情報公開を旨とする民主国家アメリカでは、いまや市民がアクセスできない「知る必要はない」情報が国家を覆いはじめ、その全貌をコントロールできているものが誰かも判然しないという。
 本書は長年にわたる精緻な取材でピュリツァー賞を受賞しているワシントンポストのベテラン記者らが描きだした、最高機密国家アメリカの驚くべき実相である。

日本の「秘密保護法」「NSC」の行方を見極めるために
 日本でも「国の安全や外交にからむ機密情報の漏洩を防ぐため」として「秘密保護法案」や「日本版NSC」の設立が検討されはじめている。あまりに無防備だった日本の状況において秘密保護の必要はあるはずだが、その方向性には問題はないのか。実効性の高い態勢はほんとうに可能なのか。いまの日本にとって、本書が示すアメリカの「最高機密迷宮」の実態はきわめて深刻な示唆に富んでいるはずだ。

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