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2013年10月30日 (水)

鳥居民評論集 昭和史を読み解く

1995

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鳥居民(とりい・たみ)著

四六判並製 352ページ 定価1680円

今年亡くなった慧眼の近現代日本史家・中国研究家の単行本未収録エッセイ集。
独自の史観から、太平戦争、原爆、ゾルゲ事件、近衛文麿、昭和天皇などを語り尽くす。

●惜しくも急逝した慧眼の近現代史家
 今年一月に急逝した慧眼の近現代日本史家であり、中国研究家の単行本未収録のエッセイ、対談等を集めた評論集第一巻(続編として現代中国を予定)。驚くべき洞察力、独自の史観、膨大な資料博捜、市井の研究家として大著『昭和二十年』(既刊13巻、未完に終わる。草思社刊)を書き続けて、昭和史の研究家たちにひそかに多大の影響を与えてきた著者の偉業の一端を示すエッセイ群。一つひとつが示唆に富む無類に面白いエッセイや対談である。戦後の史観を拘束し続けてきた各種イデオロギーから限りなく自由に資料を読み、通説を覆す刺激的な指摘に満ちている。死後もなお輝きを増す孤高の歴史家の貴重な一冊。

●内大臣木戸の開戦責任、原爆狙い撃ち説など、通説を覆す指摘
 第一章太平洋戦争を読み解くための読書案内から始まるが、これは数年前Web版草思という草思社のPRページに連載されていたもの。『清沢冽・暗黒日記』『木戸幸一日記』『評伝・近衛文麿』『高松宮日記』などについて書かれているが、膨大な資料を読み込んできた著者ならではの極めて良質な読書案内となっている。その他、PR誌などに書かれたものなど一般に目に触れていない短いエッセイが多く、却って著者の史観がわかりやすい。氏が指摘してきた独自の見解をいくつか列挙してみよう。
「原爆は終戦を意図的に遅らせて投下したトルーマンの作為である」「開戦を避けようとした近衛首相、開戦に重大責任がある内大臣木戸の役割」「終戦の動きは貞明皇太后の働きかけから始まる」「山本五十六と高松宮の避戦の行動」「日本軍の行動が共産党に漁夫の利を得さしめた構図」「横浜事件、ゾルゲ事件のあっけらかんとした真相」「戦後の欺瞞的体制を決定した木戸・ノーマン・都留史観」など。
 現在でも納得できる刺激的指摘である。最も一般的に読める鳥居民史観入門書。

◎第二巻『鳥居民評論集 現代中国を読み解く』来年二月刊行予定。

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