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2013年11月20日 (水)

アメリカはいかにして日本を追い詰めたか
―― 「米国陸軍戦略研究所レポート」から読み解く日米開戦

2015

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ジェフリー・レコード 著
渡辺惣樹 訳・解説

四六判上製 二二四頁 定価一八九〇円

○日米関係史における最大の謎に迫る
 昭和十六(一九四一)年十二月八日、真珠湾攻撃によって太平洋戦争の戦端が開かれてから今年で七十二年。日本開国いらい半世紀にわたる日米交流によって彼我の工業力格差を十分承知し、なおかつ日中戦争が長期化しているなか、なぜ日本の指導層は開戦に踏み切ったのか。宣戦布告に僅かに先んじて奇襲作戦が行なわれ、そのことで戦後は〝卑劣な国(国民)〟といった思いがけないイメージを付与されてしまった私たち日本人はもとより、米側にとっても、あのときの日本の戦争決断は近現代史における大きな謎であり様々な研究がなされてきたようです。本書は米国空軍大学の教官を務める国防政策の専門家ジェフリー・レコード氏がこの疑問を取り上げて考察を加えたレポート(二〇〇九年二月に米国陸軍戦略研究所から発表)を、『日米衝突の根源 1858―1908』『日米衝突の萌芽 1898―1918』(第二十二回山本七平賞奨励賞受賞)等をものして注目される渡辺惣樹氏が訳出、レポートとほぼ同量の解説を付し、日米開戦の真実に迫った一冊です。

○「開戦原因の一半は米国にあり」とした公式レポート
 レコード氏のレポートは陸軍幹部養成のためのテキストとしても使われるオフィシャル・レポートですが、何よりも重要なのは開戦原因の半分が時の大統領F・D・ルーズベルトの外交の失敗にあると断じていることでしょう。すなわち当時のルーズベルト大統領の唯一の関心事はすでに始まっていたヨーロッパの戦いにいつ参戦するかであり、エネルギー資源を確保するべく太平洋方面に南下してきた日本に対しては、強力な経済制裁を課すだけで事足れりとし、それが実際には「戦争行為」同様とは認識せず、日本を「戦争か、領土を放棄し米国経済の隷属下に入るか」の二者択一に追い詰めたと結論付けているのです。レコード氏は、日本の石油備蓄量に鑑みれば、あの時点での開戦決断には合理性があったとも指摘、また開戦の背景として日米ともに互いの文化を理解していなかったことを挙げ、これに関連してブッシュ・ジュニアの近年の戦争を俎上にのせており、長いスパンでとらえた氏の歴史の考察には目が開かれる思いがします。

〇「ハル・ノート」とは何だったのか
 当時の国際関係を俯瞰しつつ、開戦の謎に関する考察を深化させた渡辺氏の「解説」は、単なる解説の域を超えており、これだけを独立して読んでも読みごたえがあります。とくにⅢ部「ハル・ノートの本質とハミルトン・フィッシュ下院議員の悔恨」は秀逸。四一年時点で対日戦争を支持しながら、戦後はこれを悔いた一人のエリート議員の生い立ちとその思想に絡めて、「ハル・ノート」の本質を解き明かしていきます。渡辺氏の解釈は本書をお読みいただくとして、フィッシュ議員がなぜ戦後になって日本との戦いを激しく後悔したのか。ルーズベルト大統領は真珠湾攻撃の翌日に議会で行った演説のなかで、真珠湾攻撃の十日前に日本に向けて発した最後通牒(ハル・ノート)について一切触れなかったことを、戦後初めて知ったためでした。この一事をもってしても、開戦前夜の様相は一変するのではないでしょうか。開戦史を捉え直すうえでの必読の書と考える所以です。

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