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2013年12月11日 (水)

微笑む慶喜
――写真で読みとく晩年の慶喜

2024

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戸張裕子著 河合重子監修 
四六判 並製 240ページ 定価1980円

没後100年、最後の将軍徳川慶喜は晩年をどう生きたか。
多くの写真を解説、明治華族界を彩り豊かに描く。

●没後百年、関心高まる慶喜の生涯
 今年は最後の将軍徳川慶喜が死んで百年目にあたり、各地で回顧展等が開かれました。未だに慶喜関連の書がたくさん刊行されますが、幕末史を語るには欠かせない登場人物のひとりであり、歴史ファンには関心の高い人物です。この本は明治35年に公爵に叙せられ、名誉回復なって以降、大正二年に死ぬまでの晩年に焦点を当て、比較的多く残されている慶喜関連の写真を紹介し、読みとくことによって晩年の心理・心境を推理した本です。
 慶喜は明治三十年静岡から東京巣鴨に移住し、翌三十一年天皇に内々で拝謁を許されます。明治天皇は朝敵の汚名を着て謹慎していた慶喜を公に名誉回復し、明治の御世に組み込むために明治三十五年公爵の位を授け、慶喜家を独自に建てることを許します。これは大々的な行事だったようで、徳川親藩や譜代大名や旧幕臣などと何度も祝賀会が開かれ、記念写真が撮られています。慶喜は自分でも写真を撮る大の写真好きですが、撮られるのも好きだったようで晩年はとくに写真を多く残しています。この本はその写真類をメーンに、いつどこで撮られたか、誰が写っているのかなど丹念に追求し、慶喜とその周辺の明治華族界の知られざる側面を明らかにしています。

●恭順していた慶喜はようやく解放されたのか
「微笑む慶喜」というのは第5章のタイトルで、カバー写真にも使ったスナップ写真のことです。慶喜はほとんど笑った顔の写真を残していません。この写真は松戸の戸定歴史館に寄贈された小さな写真で(家令の古澤氏寄贈)、明治三十九年日露戦争凱旋祝賀会で撮られたものと思われます。ここではスナップ写真のせいか珍しくかすかに微笑んでいる慶喜が見られます。明治四十年から「昔夢会」という渋沢栄一の肝いりで慶喜の幕末回想を聞く会が始まります。日露戦争に勝った日本は近代国家として隆盛していきますが、慶喜は明治国家に組み込まれ、どのような感懐を抱いたかというのは大いに興味あるテーマです。著者は戸定歴史館に収蔵されている「家扶日記」という慶喜の家令だった古澤氏の書いた膨大な記録を読み解き、慶喜の日常や行動を詳細に追いかけていきます。旧幕臣たちの微妙な慶喜への尊崇と反発なども興味深い人間模様です。
 また、註の人物紹介は写真入りで、ひとつの面白い読み物になっています。

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