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2014年1月20日 (月)

もう一度 天気待ち
――監督・黒澤明とともに

2026

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野上照代著  
四六判 並製 368ページ 定価1995円

黒澤明監督について書かれたあの名著を、新たに大幅な書き下ろしを加えて復刊。
三船敏郎と黒澤の微妙な距離感を、誰よりもよく知る著者が詳細に描く。


●海外で黒澤明資料として定番の名著

 この本は2001年に文藝春秋社から刊行された『天気待ち』を大幅な書き下ろしを加えて復刊したものです。『天気待ち』は文庫化されましたが、文庫本をふくめて久しく絶版になっていました。もともとキネマ倶楽部というビデオ刊行会の月報に連載されていたエッセイをまとめたものです。黒澤映画のスクリプター(記録係)として、『羅生門』以降のほとんどの作品に参加していた(松竹の『白痴』は例外)著者でしか書き得ない創作家・黒澤明の実像を洒落たユーモア感覚を交えて綴った名エッセイです(彼女自身のイラストも秀逸)。映画監督フランシス・F・コッポラの推薦文が帯についていますが、英語版にはスピルバーグやジョージ・ルーカスの賛辞も付いており、海外では黒澤明について書かれた第一級の資料としてむしろ日本以上に有名な作品であり、英語、スペイン語、中国語ほか多くの言語に翻訳されています。
 資料として重要なだけでなく、エッセイとしてとても面白く、何度読んでも素晴らしい作品です。著者は名文家としても知られ、自伝的作品『母べえ』が山田洋次監督、吉永小百合主演で映画化されたほどです。

●三船敏郎と黒澤明との微妙な距離感を描く
 今度の本では黒澤組の現場の思い出とともに、三船敏郎、仲代達矢について多くの筆を費やしています。特に三船については評伝的な部分も含めた人となりや黒澤監督との関係、微妙な距離感などを描いており、いかに二人がお互いを尊重し合っていたのかの感動的なエッセイであり、ここが本書の白眉と云えましょう。三船は『赤ひげ』以降、黒澤作品に出ていませんが、晩年まで黒澤からお呼びがかかるのをいかに待ち焦がれていたか、黒澤が一時代を築くのに三船が果たした役割をいかに恩誼に感じていたか、二人のあいだを行き来して連絡役をつとめていた著者にしか知りえない、信頼関係の機微を巧みに描いています。
 二人の代表作『七人の侍』公開後、今年は60年であり、にわかに三船敏郎に注目が集まっています。評伝が出たり、特集上映が予定されていたしています。しかし、黒澤と三船のことを知るにはやはり本書以上の本はないのです。

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